C-2 企業研究とは何か
マイストーリーと企業の合致
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名著の教えから導く就活の本質
多くの人が一般的に行う企業研究は、明確な目的も焦点もなく、企業説明会を流れ歩くというやり方であり、この方法は企業研究でなく、「企業サーフィン」であると説明しました。企業サーフィンが、非効率的なことはわかったと思います。
ではなぜ、企業サーフィンになってしまうのでしょうか。それは、「企業研究とは何か」が理解できていないためと考えられます。では、企業研究とは一体何なのでしょうか。それを理解するためには、まずは企業研究の目的とは何なのか、を考える必要があります。
多くの人の企業研究の目的は、「企業説明会を回り、とりあえず見て聞いて知る情報収集の為」だと思っていないでしょうか。実は、この目的設定が間違っています。正しい目的は、本当の志望先を見出すため
です。
A-7で説明したように、自己分析や企業分析をきちんと行わなかった場合、①自分の人生における仕事の位置づけと進路先企業やそこでの仕事とのミスマッチ、②自分と進路先の企業とのミスマッチ、という二つのミスマッチを誘発する可能性が高くなってしまいます。そのような悲しい事態を回避するためには、本当の志望先を見出すことが重要でした。
本当の志望先を見出すためには、本当の自分と出会うことが必要です。本当の自分と出会い、本当の志望先と出会うために、本質的な自己分析と本質的な企業研究があるわけです。まず、本質的な自己分析を行い、マイストーリーを設定し、自分の中での仕事の位置づけ、企業の評価基準を明確化することで、本当の自分が分かります。
そのうえで、「自己分析で導き出したマイストーリーや仕事位置づけや企業の評価基準に合致するか、を確認する作業」が企業研究です。その結果として、本当の志望先が分かります。そうすると、上記で挙げたような二つのミスマッチを回避することもできるわけです。決して、雰囲気や内容を知って、その中から良さそうなところを探すという消極的なものではなく、すでに自分が持っている企業の評価基準に合致するところを見つけに行くという積極的なものです。
企業研究の目的が、内定獲得の可能性を飛躍的に向上させるにとどまらず、より重要なのは本当志望先を見出すことだと理解できたと思います。その前提として、本質的な自己分析が完了していることです。そうすると、本当の意味での企業研究とは、「マイストーリーや自分の企業の評価基準との整合を確認する作業」
となります。
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では、どのように確認をすればよいのでしょうか。その内容は、自分のマイストーリーと企業が合致するかを確認することです。マイストーリーは、ビジョン、ミッション、バリュー、成長条件(=企業の評価基準)で構成されます。その各要素で企業と合致するかを確認する必要があります。
そのために、企業理念、中期経営計画、アニュアルレポートや決算短信等により、その企業のビジョンやビジネスモデル及び将来計画を確認します。それにより、企業の理念、目指す方向、今何をしているか、といった企業のコア
が明らかになります。そうすると、マイストーリー(自分のコア)と企業のコアを見比べて、「自分が目指す方向に進めるか」、「より具体的には自分が得たい能力や経験をできるか」で判断することができるようになります。
なお、この際、志望先企業の一つが見つかったとして、その企業の求めている人物像と自分が適合しているかも、確認しておく必要があります。企業の求める人物像の評価基準と自分が全く合致していない場合は、内定獲得の可能性がかなり低くなるためです。
つまり、企業研究とは、自分のコアと企業のコアが合致するかを確認する作業
であり、そのための一つの手段として情報取集があり、情報収集のための一形態として企業説明会があるということです。この理解もなしに、なんとなく企業説明会に行ったところで、何の情報を収集しなければならないかの目線もなければ、情報収集した後どうするのか、という後の行動もないため、結局何も生み出さない非生産的な時間にしかならないわけです。そのまま選考に進んだところで、当然ながら受かるわけがありません。
まとめると、企業研究の目的は、一般的な「情報収集」ではなく、「内定獲得可能性の向上と、より重要なのは本当の志望先を見出すこと」
です。そのうえで、その内容としては、一般的な企業説明会を駆けずり回りいろんな情報を手に入れることではなく、マイストーリーと企業が合致するかを確認するというもの
です。その合致をするために必要な情報を収集する、という情報収集の手段であるわけです。この企業研究の目的と内容を理解したうえで、企業研究に入っていけば、意味のない企業研究にはならないと言えます。
今回は、本当の企業研究の目的が本当の志望先を見出すことであり、その内容がマイストーリーと企業のビジョン・ミッション・バリューなどの要素が合致するかを確認することであることを理解できたと思います。そして、目的と内容が明確になると、適切な方法論も明確化できます。実は方法論は、企業説明会にとどまりません。次回は具体的な企業研究のステップについて見ていきましょう。
今回のポイント
1. 企業研究の目的は、本当の志望先を見つけるためのもの
2. 企業研究の内容とは、自分のコアと企業のコアと整合するか確認する
3. 企業説明会は、2を行うための情報収集の手段
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基盤とした名著
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この教えを基盤とし、相手を理解し相手の出方=相手の求めることやニーズを的確に把握することの重要性の示唆が得られます。