C-1 企業研究の重要性
企業研究を軽視する人の陥る罠
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名著の教えから導く就活の本質
前章では、自己分析について説明し、「本質的な自己分析はマイストーリーを構築することである」と説明しました。今回は、マイストーリーの構築により抽出された企業の評価軸を活用して、業界・企業を選んでいく「企業研究」の段階に入ります。今回は、企業研究の意義を説明します。
あなたは、企業研究と聞いて何を思い浮かべますか。おそらくほとんどの人は、企業説明会と答えると思います。就職活動の始まりが合同企業説明会の参加だった人もいるでしょう。よくわからないけれどとりあえず行ってみようと考えて参加したのではないでしょうか。あるいは、就職活動にある程度慣れてきた頃には、就活サイト等の業界内差別化情報を見て、無理やり自分の志望動機に反映させたり、適当に社訓を調べて、面接で「共感した」と伝えたり、といった動きをします。
名著で就活をしっかり読んできたあなたなら、このような企業研究をした人の末路は、言わずもがなでであると言えますね。彼らは、お祈りをされて企業を恨む、なんて事になるかもしれません。なんでこんなにあちこちへ足を伸ばして、ニュースや雑誌で情報収集したのに落ちるのだと。しかし、この失敗には原因があります。それは、①自己分析もまともにせずに企業を見に行っていること、②企業研究の重要性を理解していないこと、の二点から必然的に発生した失敗である、と言えます。
まず、第一の原因「自己分析をまともにせずに企業を見に行っている事」について見てみましょう。
学生と企業の双方にとって、自己分析のない企業研究は、時間の無駄以外の何物でもありません。学生にとっては、業界や企業の好悪や適否を評価する基準がなければ、そもそも企業を見るべき視点・焦点を持たないため、ただ色んな企業の存在と雰囲気を知ることのみで終わってしまいます。それは、ネットサーフィンならぬ「企業サーフィン」だと思います。
企業サーフィンの状態では、ネットサーフィンと同様に重要な情報は得られませんし、ちょっとした感覚とバイアスで重大な進路である志望企業を判断してしまいかねません。それでは、ミスマッチが起こる大きな危険があります。つまり、なんとなく憧れのある業界・企業のいい情報ばかりを探し回り、本当はビジョンに合っているはずの業界・企業を除外してしまう可能性があるのです。
また、なんとなくで志望した場合、企業にとっては、誰にでもいえるような表面的な内容で志望動機を説明されることになるので、評価に値しないと判断します。なぜなら、B-2でも説明したように、企業はあなたが会社に入る素養(必要性=論理)と心(感情)の両方を評価軸として学生を選ぶからです。自社について浅い理解しかできていない学生より、きちんと企業研究を行い、深い理解をしている学生の方が、論理も感情もしっかりと醸成されているため採用されやすいのです。したがって、企業説明会も選考も、その学生にかけた時間分は無駄になってしまいます。
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企業説明会が無駄になる事態を回避する為に、もしあなたがまだ自己分析を終えていなければ、今すぐに自己分析に戻ってください。企業研究とは、あくまで自己分析があってこそ意義が出てくることを理解しておくことが重要です。
つぎに、内定獲得に至らない第二の原因「企業研究の重要性を理解していないこと」を見ていきましょう。
第一の原因で述べたように、企業は学生を素養と心で測ります。つまり、内定獲得には、入社に値する論理と感情が必要なのです。当然企業研究を軽視し、きちんとした企業研究なしでは、企業に対する理解力がないと「論理面」でマイナス評価となる、あるいは準備が不十分で入社に値する気持ちがないと「感情面」でマイナス評価となります。
したがって、自己分析のない企業研究、そして企業研究の軽視の2点は、内定を獲得できない大きな原因となるわけです。
逆に言えば、「企業研究はきちんと行えば、就職活動を成功に導くほどの影響を持っている」と捉えることができます。企業研究をきちんと行い、収集した情報を、自己分析で導出したマイストーリーというあなただけのフィルターに通せば、自然とあなたのマイストーリーに沿った業界・企業が取捨選択され、あなたのビジョン・ミッションから論理的に一貫した「私を採用するべきだ」という物語を築き上げることができます。
ここまできちんと自己分析や企業研究をおこない、本当の自分と行くべき進路・行きたい進路を見出して初めて、単なる憧れを超えた「その企業に行きたい」という強い感情が湧き上がってきます。つまり、本当の志望先が見いだせるわけです。そのうえ、企業は、その人の価値観と企業が深くつながり、そのつながりが正しい認識と理解に基づいていると認識すれば、あなたを採用する必要と感情の評価基準が満たされやすくなり、飛躍的に内定の可能性上がると言えます。
つまり、自己分析と企業研究を行えば、あなたがその企業に「行くべき」という論理と「行きたい」という感情が一致し、飛躍的に内定獲得の可能性が高まる
という影響を持っているわけです。
なお、企業研究をきちんと行えば、自己分析をより精緻にしてくれる作用もあります。それは、企業研究を行うことで、マイストーリーでは挙げていなかったが、実は自分にとって重要な価値観・要素が隠れていることを発見することがあるということです。
例えば、自分の惹かれている企業が自己分析で洗い出したどの条件にも当てはまらないときなどの場合です。その場合は、自己分析で出した企業の選定基準が不十分と捉え、もう一度自己分析に立ち返って深く考えればよいのです。むしろ、企業研究は、マイストーリーをブラ ッシュアップする好機でもあります。結果として、より本心に近いビジョンや企業の選定基準が導き出されるかもしれない作用です。
したがって、自己分析と企業分析をきちんと行えば、本当の自分を見いだせ、そして自分自 身が納得のいく本当の志望企業を見出すことができます。いままで企業研究に対して、あまり深く考えてこなかったあなたもこれで、その重要性が理解できたでしょうか?
次回は、企業研究とは何かについて説明します。
今回のポイント
1. 自己分析なしに企業説明会にいくことは「企業サーフィン」状態になってしまう
2. 企業研究はきちんと行えば、入社に値する論理と感情を構築できる
3. 企業研究をきちんと行えば、自己分析をより精緻にしてくれる作用もある
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基盤とした名著
武経七書の一つ。古今東西の兵法書のうち最も著名なものの一つである。孫氏は戦争の記録を分析・研究し、勝敗は運ではなく人為によることを知り、勝利を得るための指針を理論化して、本書で後世に残そうとした。最も重視した点は相手を知り、戦わずして勝つこと。
ここから、相手を知ることの重要さを示唆してくれます。