B-6 マイストーリーの構築
時代に応じて自分を変革する
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名著の教えから導く就活の本質
※本内容は、ビジョンフレームワークを活用するプロセスを事例をもとに説明するものであるため、短縮はできません。したがってFull版と同じ内容の提示となります。
今回は、ビジョンが定まった後の、マイストーリーの構築の仕方について説明します。
B-5では各ステップでなぜを繰り返し、抽出された言葉は全て細かく定義する作業を何度も繰り返すことで、ビジョンを見出せることが分かったと思います。ビジョンを定めることが最大の難関でした。それ専用のフレームワークを提案するくらい山場なのです。
その意味で、本質的な自己分析の半分以上は、ビジョンを定めることが占めるといっても過言ではありません。
ここからは、B-1で示した、マイストーリーの構築に入っていきます。ビジョンが定まったのち、ビジョンからミッションを定めていきましょう。
ミッションの定義は、「ビジョンを実現するために成し遂げねばならない使命」
を意味します。ビジョンが、どんな自分でありたいかであり、言い換えれば理想の自分や夢ですので、ミッションは理想の自分になるために成し遂げるべきことまたは自分の夢を叶えるための目標
と言い換えることができます。
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例えば、坂本龍馬の場合を見てみましょう。彼のビジョンは日本が欧米列強と肩を並べる強い国にすること、と表現できます。理想の自分に言い換えると、日本を欧米列強に肩を並べる強い国に導くことのできる人物です。そのビジョンを具現化するために成し遂げるべきこととして、徳川幕府を廃止し、天皇の下で万民が平等の近代国家を作り上げることでした。一言でいえば倒幕と近代国家の建国です。
このように、ミッションは、ビジョンを成し遂げるために果たすべき使命として表現されます。ビジョンの具体化と言い換えても結構です。ミッションを定めるには、「理想の自分あるいは自分の夢に至るには何を成し遂げなければならないか」を列挙することです。列挙したうえで、優先順位や時間軸で整理をすると、ミッションが見えてくると思います。
ミッションが見えてきたら、次はバリューです。バリューは、ミッションを成し遂げるために自分が出すべき価値を意味します。バリューは、ミッションに到達するために必要な要素バリューファクターで構成されます。バリューファクターは、能力、環境、ポジションに分類されます。どのような能力を持ち、どのような環境に身を置き、どのような立場にあればよいかを考えることでバリューが出てきます。つまり、バリューとはミッションの達成に必要な「条件」であるわけです。
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坂本龍馬の場合で見てみましょう。彼のミッションは、倒幕と近代国家の建国でした。倒幕についてみてみます。倒幕には、アメリカの黒船のような軍艦を持つことが重要だと考えたわけです。何せ幕府の役人は黒船に恐れをなして震え上がったわけですからね。そのため、倒幕には軍艦を操船する能力が必要だと考え、神戸海軍操練所を経て亀山社中、その後海援隊を設立します。また、倒幕にあたって、藩で倒幕しても徳川以外の幕府(薩摩幕府、長州幕府)ができるだけだと考え、藩を超越した自由境遇を選択します。しかし、事を成すには組織の背景が必要として、脱藩浪人を組織します。その上で、実際には規模が大きく強い武力を持つ雄藩をまとめなければ倒幕は不可能であるため、薩長同盟を締結するなど、薩長間の橋渡し役というポジションを選びます。
したがって、彼が描くビジョンを実現する倒幕というミッションを果たすために、軍艦の操船、脱藩と脱藩浪人の組織化、雄藩の仲介役、というバリューファクターが必要であったということです。もちろん彼の生きた時代は、激動の時代であり、最初から戦略的に描き切っていたわけではなく、時代が動く中で少しずつ描いていったと思いますが、彼の行動からマイストーリーに体系化するとこのようになります。
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そして、バリューファクターが抽出されれば、今度はそれぞれのバリューファクターを得るために、どのような成長をする必要があるのかという、成長条件を洗い出します。思い描く成長をするために、必要な条件を具体化することを意味します。どのような経験をし、またどのような知識を得て必要な能力を養うか、どのような環境に身を置くか、どのような立場に身を置くか、です。バリューファクターまでが長期目標だとすれば、成長条件は短中期の目標となりますし、進路の判断基準となります。
坂本龍馬の場合は、軍艦操船の力を養うために、神戸軍艦操練所で知識を得、亀山社中で操船の経験を得ます。これらにより、軍艦操船の能力を養いました。脱藩と脱藩浪人の組織化のために、まずは一流の剣客になり土佐藩の下士で尊敬を集める存在になったうえで脱藩しました。雄藩の仲介役になるために、勝海舟に弟子入りし、広い人脈を得ました。あとはこれを時系列でどのタイミングでどのように行うか整理するだけです。
以上のように、マイストーリーとは、将来のおおざっぱな計画です。理想の自分になるために、その到達に必要な要素を分解し、その要素を得るためにはどうすればよいかを考えた将来計画を意味します。
坂本龍馬もそうであったように、マイストーリーを最初から完全に描き切ることは不可能です。なぜならマイストーリーは、年を経て様々な経験をするうちに変わっていくからです。しかし、その時その時で、その瞬間においては、自分自身としては描き切っていると思えるほど、日々考え抜いていくことが重要です。
坂本龍馬は、何か世に役立つ人間になろうと考え、剣が得意であったため、その時は剣の道を究めることに自分の道を見出し、上京しました。そうこうしているうちに黒船来航という衝撃が日本を襲い、剣ではなく国事だと思うようになり、時代遅れで頭の固い藩を脱けます。そして、国事を成し遂げるには船だと思うようになり、奔走して神戸海軍操練所の設立にこぎつけます。その後、欧米列強への対応を見て、倒幕を志すようになり、倒幕のために、雄藩の仲介を行います。坂本龍馬の例からもわかるように、その時その時で、自分の人生を真剣に考え、道を思い定めています。
したがって、あなたも、これまでのあなたを見つめ、これからのあなたを真剣に考え、マイストーリーを構築してください。そして、日々マイストーリーを更新してください。その時その時で真剣に考えていれば、新しい視野が入ったり変わったとしても、それをうまく結びつけ、人生が一遍の詩のようになります。
今回のポイント
1. 前節で思い定めたビジョンをもとに、ミッション・バリュー...と考えていく。
2. マイストーリーは様々な経験をするうちに変化する。その時々に合わせ、マイストーリーの再構築が必要。
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基盤とした名著
坂本龍馬の一生を描いた歴史小説。生死を超越し、事業に生涯をかけた偉人の生き様が見れる名著。マイストーリーの事例で活用。