SMBC日興証券
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の証券業務を管轄するSMBC日興証券について研究を行います。
-
SMBC日興証券は、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)であり、グループ内の証券業務を管轄しています。なお、新卒採用は部門別に行っています。
会社概要
会社概要
2009年設立(1918年創業)
資本金 約100億円(SMFGの100%子会社)
従業員数 連結10,310名
事業内容(事業部門)
会社ごとに差異があるため、本箇所は同社の採用HPより引用しています。
リテール、インベストメントバンキング、グローバル・マーケッツ、クオンツ、システム、コーポレート※マウスオーバーで拡大
●リテール
個人富裕層や未上場企業の顧客に向けた資産運用コンサルティングを行うことが、リテールの主たる業務です。株式、債券、投資信託や保険などの様々な金融商品を用いて、顧客の資産運用・資産形成に貢献しています。また、今後益々ニーズが拡大する事業承継など経営・相続の問題にも、SMBCグループとしての相乗効果を発揮し、顧客の課題を解決する多様なサービスを提供しています。
●インベストメントバンキング
顧客の企業価値向上のため、資金調達やM&Aをはじめとする金融サービスを中心に展開し、グローバル時代の企業戦略を全面的にバックアップしています。顧客の経営課題や、刻々と変化するマーケット環境に合わせた、最適なソリューションを提供するのが主な業務です。※マウスオーバーで拡大
資金調達業務では株式による資金調達(エクイティファイナンス)や債券による資金調達(デットファイナンス)など、顧客にとって最適な方法を提案。発行体だけでなく投資家の利益の最適化も図り、案件を執行しています。M&Aアドバイザリー業務では、M&A案件の提案から、企業価値の算定、契約書作成などあらゆる業務をサポートしています。
●グローバル・マーケッツ
銀行や保険会社、運用会社、ヘッジファンドなど、国内外の機関投資家に対して、商品情報やマーケット情報を提供することで、顧客の投資活動を支えます。※マウスオーバーで拡大
セールス&トレーディング業務は、主に株式を担当するエクイティ本部と、主に債券・金利・為替を担当する金融市場本部からなり、変化するマーケット環境を冷静に分析し、顧客の多様なニーズに応える情報と商品を提供しています。
リサーチ業務は、顧客の投資活動を情報面からサポートすると同時に、社内のセールス、トレーダーに向けて情報提供を行っています。
●クオンツ
数理・テクノロジーの専門家として、日々刻々と変化する金融市場に対応するためのソリューション提供・基礎インフラ整備を行うのがクオンツの役割です。現在のクオンツの主な活躍の場は、グローバル・マーケッツ部門のクオンツ室(フロントクオンツ)とコーポレート部門のリスク管理部(ミドルクオンツ)に分かれ、デリバティブを中心に高度な数理的素養が求められる業務を行っています。※マウスオーバーで拡大
●システム
現代の金融ビジネスに欠かせない情報システムの開発やバージョンアップ、セキュリティ対策など、各部門と連携して万全なシステムの構築・維持に努めています。
リテール営業店に向けては社員のパフォーマンスを最大化するために、本来の営業活動に費やす時間を創出する営業店サポートシステムの構築。ホールセール業務に向けては、国内外の機関投資家の様々な要望に応えるため、最新のトレーディングシステムやグローバルCRMシステムなどの導入を進めています。
●コーポレート
経理・財務、法務と会社の根幹を支える分野からSNBC日興証券の企業基盤とビジネスをサポートしています。証券会社を取り巻く環境が一層多様化・複雑化していることを認識し適切に対応することで会社の健全性を維持。さらなる収益性の向上を図るために整備と実践に取り組んでいます。
>
歴史
1918年、遠山元一が現物株の取り扱いを業とする個人商店としての川島屋商店を設立したことに端を発します。また、1920年に日本興業銀行の下、日興證券が設立。1944年に川島屋證券(1939年に川島屋商店から証券引受業務を切り離し設立)と日興證券が合併し日興證券設立。
1999年には、シティグループとの合弁による、投資銀行業務を行う日興ソロモン・スミス・バーニー証券(後の日興シティグループ証券)が営業開始。また同年、総合証券初のオンライントレード専門会社日興ビーンズ証券を設立。2001年には持株会社化し、持株会社名を日興コーディアルグループ、証券子会社名を日興コーディアル証券としました。2007年には日興コーディアルグループ株式の公開買付により、シティグループの子会社となります(後に三角株式交換により完全子会社化)。
2009年には日興コーディアル証券分割準備株式会社設立し、同年10月に日興コーディアル証券分割準備株式会社は、旧日興コーディアル証券株式会社の全事業と、日興シティグループ証券株式会社の一部事業(投資銀行業務)等を承継し、日興コーディアル証券株式会社に社名変更。同時に株式会社三井住友銀行への株式譲渡により、三井住友フィナンシャルグループの一員となります。2011年にはSMBC日興証券に商号変更、2018年にはSMBCフレンド証券と合併。
以後発展を続け、現在に至ります。
証券業界で最初に外資系証券会社シティグループと資本・業務提携を行い、投資銀行業務は提携解消後も引き継いでいること、そして現在SMFGの一員として銀証一体となっている点が特徴的な歴史です。
財務分析
基礎データ
一般企業の売上にあたる営業収益、利益ともに安定しています。2018年度は業界全体が市況悪化で業績が悪化しておりますが、SMBC日興証券は大幅な減益とはなっておらず堅固な収益体制と言えます。また利益率は業界トップ水準であり大和証券と肩を並べています。営業収益や利益ともに業界第三位にあり、二位の大和証券の約半分です。同じ銀行系の三菱UFJモルガン・スタンレー証券やみずほ証券とは概ね同じ規模です。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大
部門別収益
セグメント情報の公表はありません。
(金融費用控除後)
種類別収益
受入手数料が半分以上を占める唯一の証券会社です。金融収益は業界内で最も少ない点も特徴です。ここから、リテール・ホールセールの営業力が強みであることが読み取れます。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大
※受入手数料:株式や債券を売買する際の仲介手数料、アセットマネジメント手数料(信託販売、運用)、投資銀行業務手数料で構成される手数料収入
※トレーディング損益:証券売買の差額により得られる損益
※営業投資有価証券関連損益:投資事業による損益
※金融収益:保有する有価証券の受取利息や配当金、有価証券貸借取引に係る収益
※2018年度
※マウスオーバーで拡大
地域別税前利益
公開情報はありません。
主な資産の状況
最後に資産状況ですが、担保付き契約、トレーディング資産・PE(プライベートエクイティ)投資が大きいです。野村證券同様に担保付き契約が最大であり、ややリスクが高めの資産構成となっていますが、大和証券や三菱UFJモルガン・スタンレー証券がトレーディング資産・PE投資が最大であったことと比較すると、相対的にリスクを抑えた資産構成です。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大
※現預金:現金・預金と預託金の合計
※貸付金及び受取債権:約定見返勘定と短期差入保証金の合計
※担保付き契約:有価証券担保貸付金
※トレーディング資産・PE投資:トレーディング商品と信用取引資産とPE投資の合計
総じて、利益率の高さと営業部門の強さ(手数料ビジネスの強さ)が特徴です。SMFGの自由闊達で情熱的な姿勢が、証券会社の顧客向け事業である手数料ビジネスの強さに結びついているものと思われます。
企業ストーリー
SMBC日興証券は、経営理念とステートメント及びスローガンを定めています。経営理念をミッション、ステートメントをビジョン、スローガンはミッションとビジョン全体を端的に表したものと解釈します。
ミッション
シンプルかつ王道のミッションです。銀行系らしい堅実性が中心の内容です。その中でも多様性と個性という表現が特徴的です。SMFG自体が自由闊達な風土のあるグループであり、その点が反映されたものと思われます。※マウスオーバーで拡大
ビジョン
明日のこと、未来のことを一緒に話共有できるパートナーになることを目指しています。チャレンジ、想い、共感、価値創造といったエモーショナルな表現が特徴です。※マウスオーバーで拡大
スローガン
ステートメントの内容を端的に表現したものと思われます。未来を一緒に紡ぐパートナーでありたいという想いが伝わってきます。※マウスオーバーで拡大
総じて、堅実さ・情熱・創造性がそれぞれバランスのよい内容です。金融機関としての堅実さとSMFGの風土である情熱と創造性が中心です。
この企業ストーリーがあるからこそ、日本初の個別株式ポートフォリオ提案サービスを開発するなどといった先進的な成果があると思われます。
企業ストーリーで使用される言葉を分類整理すると、下図のように表現することができると思います。※マウスオーバーで拡大
中期経営計画
SMBC日興証券は、SMFGの完全子会社であるため非上場会社であり、中期経営計画は公表していません。SMFGはグループ一体経営を強く意識して行っていることを対外的に公表しており、そのため中期経営計画も一体でSMFGとして公表しているものと思われます。したがって、SMFGの企業研究を参照下さい。
求める人物像の推察
求める人物像
企業ストーリー、歴史、財務分析、中期経営計画を統合すると、求められている人材は、「顧客寄り添って未来を一緒に創っていく情熱、最高の信頼勝ち取る堅実性、新たな価値を創造する創造性、をバランスよく備えた、個性あふれる人材」です。そのためには、顧客を理解し本当の悩みを見出す理解力と想像力、最適な提案を考案する構想力が必要となります。その基盤となるのが、顧客に寄り添う情熱です。
また、SMFGが多様性や個性を重要視する自由闊達な風土であり、その一員であるSMBC日興証券でも個性が重要視されます。
なお、SMBC日興証券は、インベストメントバンキング部門については、Nikko Investment Bankingとして、いわゆるエリート採用(20名程度)を行っており、専門の採用HPも設けております。
キーワード
※マウスオーバーで拡大
-
まとめ
企業理解イメージ図
これまでの概要、歴史、財務分析(ビジネスモデル)、中期経営計画、企業ストーリーを構造化し、イメージ図に落とし込むと下図のようになります。
※マウスオーバーで拡大
体育会系、自由闊達といったイメージだと思います。最高の信頼、いっしょに明日のこと、想い、個性というような言葉がキーワードとなります。
なぜこのキーワードになっているかというと、
①旧外資系と現銀行系証券という特異な歴史
②利益率が高く、顧客ビジネスである手数料ビジネスが強い財務状況
③グループ総合力と構造改革という地に足の着いた将来計画
から、構成されたものです。
そのような歴史・現在(財務・ビジネスモデル)・未来(中期経営計画)となっているのは、企業ストーリーが、バランス・情熱・創造性を高いレベルで併せ持ったものとなっているからです。
業界内での志望理由
企業分解イメージ図を踏まえ、現在・未来・企業ストーリーの3階層を焦点に、業界内で同社を志望すべき理由を考えます。
1.顧客ビジネス中心で利益率の高い財務状況
(現在=財務状況から)顧客ビジネスである手数料収入が半分以上を占める唯一証券会社。
2.グループ一体化と構造改革という地に足の着いた方向性
(未来=中期経営計画から)グループ総合力の向上と構造改革という堅実・着実な将来計画。
3.堅実性と情熱と創造性のバランスがとれた企業姿勢
(企業ストーリー・未来・現在から)旧外資系×現銀行系を合わせた、金融機関としての堅実性、SMFGに共通する情熱と創造性、旧外資系に由来する高度な専門性への意識が融合した個性を重視する企業姿勢。
宿題:各社のHP、IR資料、中期経営計画を熟読し、理解を深めましょう。
【出典】:2019年12月同社HP、2019年12月まで発表の同社決算短信、中期経営計画、その他同社公表資料