三菱UFJモルガン・スタンレー証券
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)での証券業務を管轄する三菱UFJモルガン・スタンレー証券について研究を行います。
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三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、三菱UFJ証券ホールディングスを持ち株会社とし、傘下に中核会社である三菱UFJモルガン・スタンレー証券をはじめ各事業会社が属する持ち株会社制を採用しています。そして三菱UFJ証券ホールディングスはMUFGの100%子会社です。したがって、三菱UFJ証券ホールディングスと三菱UFJモルガン・スタンレー証券の研究とします。
なお、新卒採用もおおむね部門別でのコース採用となっています。
会社概要
会社概要
<三菱UFJ証券ホールディングス>
1948年設立(2010年持ち株会社制への移行に伴い三菱UFJ証券から商号変更)
資本金 約755億円
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券>※マウスオーバーで拡大
2009年設立(2010年に持ち株会社制への移行の準備会社として新設のうえ商号変更)
資本金 405億円(三菱UFJ証券ホールディングスとモルガン・スタンレー合弁会社)
従業員数 5,313名
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事業内容(事業部門)
会社ごとに差異があるため、本箇所は同社の採用HPより引用しています。
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券>
国内営業部門、投資銀行部門、市場商品部門、リサーチ部門
<国内営業部門>※マウスオーバーで拡大
営業(リテール)部門では、個人および法人(未上場、中堅以下企業)といった一般投資家と呼ばれる顧客に対して、様々なソリューションを提供し、「資産運用の支援」を行う事業部門です。
個人には、将来の各種ライフイベントを踏まえた資金収支の試算から運用をコンサルティングするフィナンシャルプランナー機能や相続、事業承継等、幅広い提案を行います。法人には、余剰資金の運用について、流動性や期待利回りの確保等、ニーズに合わせた運用のコンサルティングを行っています。
<投資銀行部門>
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投資銀行部門では、株式および債券の引受、企業の合併・買収、新規公開(IPO)に関わるアドバイザリー、不動産証券化といった業務を中心に、産業別に蓄積する豊富なノウハウと高い実績をベースに、国内外のトップ企業に対して革新的な金融ソリューションを提供する体制を確立しています。
<市場商品部門>
●債券業務(フィクストインカム・セカンダリ―業務)
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●債券業務(フィクストインカム・セカンダリ―業務)
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市場商品部門では、債券などのフィクストインカム、エクイティ、ソリューションといった商品やサービスを、機関投資家や法人・個人の顧客に向けて幅広く提供しています。顧客のさまざまなニーズに迅速に応えることで、セカンダリー・マーケット(流通市場)のメインプレーヤーとして、多くの顧客の支持を得ています。
<リサーチ部門>
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リサーチ業務では、企業アナリストやエコノミスト、ストラテジスト、テクニカルアナリスト、クオンツアナリストと呼ばれる各分野のプロフェッショナルが、世界中の機関投資家や国内の個人投資家に向けて、投資判断や経済見通し、投資戦略など、資産運用を支援するさまざまな情報を発信しています。
歴史
1948年八千代證券が設立。1981年八千代證券が光亜証券と野村證券投資信託販売と合併し国際証券に商号変更。1994年に三菱ダイヤモンド証券が設立、1996年に東京三菱証券に商号変更。1999年に東京三菱証券が三菱信証券と統合。2000年にユニバーサル証券、太平洋証券、東和証券、第一證券が合併しつばさ証券となります。2002年にはつばさ証券とUFJキャピタルマーケッツ証券が合併しUFJつばさ証券となります。同年、国際証券が東京三菱証券、東京三菱パーソナル証券および一成証券と合併し、商号を三菱証券に変更。同時に、東京三菱銀行(現商号は三菱UFJ銀行)および三菱東京フィナンシャル・グループ(現商号は三菱UFJフィナンシャル・グループ)の子会社となります。2005年には三菱証券がUFJつばさ証券と合併し、商号を三菱UFJ証券に変更。2007年には三菱UFJフィナンシャル・グループの完全子会社となります。
2010年、三菱UFJ証券がモルガン・スタンレー証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)のインベストメントバンキング業務を統合し、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に商号変更。
なお、モルガン・スタンレーはモルガン・スタンレーMUFG証券に商号変更、以後インベストメントバンキング業務を三菱UFJモルガン・スタンレー証券に切り出しており、グローバルマーケッツ業務やリサーチ業務が中心となっています。2014年には、三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券(旧三菱UFJメリルリンチPB証券)を子会社化。
以後発展を続け現在に至ります。
多数の証券会社が統合・合併を重ねてきており、最後にモルガン・スタンレーと投資銀行業務で統合という大きな統合がなされ現在に至っているという統合と合併が特徴の歴史です。
財務分析
三菱UFJ証券ホールディングスとしての財務分析です基礎データ
<三菱UFJ証券ホールディングス連結>
売上にあたる営業収益及び利益ともに安定的に推移しています。2018年度のみ業界他社同様に市況の悪化により業績が下がっていますが、大幅な低下ではなく堅固な収益状況です。他銀行系証券同様に大和証券グループの概ね半分程度の規模で、利益率は野村ホールディングスを上回ります。<三菱UFJモルガン・スタンレー証券連結>※単位:億円
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三菱UFJ証券ホールディングスのおおむね7-8割の規模です。利益率も同程度です。※単位:億円
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部門別収益
<三菱UFJ証券ホールディングス連結>
(金融費用控除後)
数値の公表はなく公表されたグラフを掲載しています。銀行系証券であるため、国内営業が半分以上を占めています。ついでグローバルマーケッツが3割程度を占めています。野村ホールディングスや大和証券グループといった独立系証券グループと比較とすると、アセット・マネジメント部門や投資部門がありません。※単位:億円
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種類別収益
<三菱UFJ証券ホールディングス連結>
手数料収入とトレーディング損益がおおむね半々です。2018年度のみ市況悪化でトレーディング損益が減少したことで金融収益が割合を増やしています。野村ホールディングスや大和証券グループといった独立系証券グループと比較とすると、金融収益の割合が少ないことが特徴です。トレーディングに強い証券会社と言えます。※単位:億円
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※受入手数料:株式や債券を売買する際の仲介手数料、アセットマネジメント手数料(信託販売、運用)、投資銀行業務手数料で構成される手数料収入
※トレーディング損益:証券売買の差額により得られる損益
※営業投資有価証券関連損益:投資事業による損益
※金融収益:保有する有価証券の受取利息や配当金、有価証券貸借取引に係る収益
※2018年度
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地域別営業収益
米州・欧州がともに1割強を占めており、海外の営業収益は3割弱を占めています。これは、証券業界では圧倒的トップであり、モルガン・スタンレーとの合弁・提携が功を奏しているものと思われます。※2018年度
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主な資産の状況
最後に資産状況ですが、担保付き契約、トレーディング資産・PE(プライベートエクイティ)投資が大きいです。大和証券同様にトレーディング資産・PE投資最大であり、野村證券やSMBC日興証券が担保付き契約が最大であったことと比較すると、相対的にリスクが高めの資産構成です。ただし、その分現預金などの流動性が最大の資産も相応に保有しています。
※単位:億円
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※現預金:現金・預金と預託金の合計
※貸付金及び受取債権:約定見返勘定と短期差入保証金の合計
※担保付き契約:有価証券担保貸付金
※トレーディング資産・PE投資:トレーディング商品と信用取引資産とPE投資の合計
総じて、営業部門の強さとトレーディングの強さの「バランス」が特徴です。銀行系証券ということモルガン・スタンレーとの合弁・提携という独自の特徴を生かした収益状況になっています。
企業ストーリー
三菱UFJモルガン・スタンレー証券及び三菱UFJ証券ホールディングスはMUFGグループとして、概ね同じ経営ビジョンを定めています。経営ビジョンは、私たちの使命、中長期に目指す姿、共有すべき価値観で構成されています。
それぞれ、ミッション、ビジョン、バリューと読みかえ、同じ階層とします。
ミッション
シンプルかつ王道のミッションです。MUFGグループ共通のミッションです。※マウスオーバーで拡大
ビジョン
MUFGと共通で、「世界に選ばれるグローバル金融グループ」が目指す姿です。ただし、それを実現させるための4項目は三菱UFJ証券ホールディングスと傘下企業独自のものです。全体的には、バランスと情熱に類する表現が中心です。※マウスオーバーで拡大
MUFGとモルガン・スタンレーの合弁会社としてその固有の強みを生かすという点がビジョンに入っていることに三菱UFJモルガン・スタンレー証券ならではの特徴的があります。
バリュー
MUFGグループ共通のバリューです。ミッションに基づく、信頼・信用が第一にありながら、プロフェッショナルや成長と挑戦といった、進化に関するバリューが言及されています。グローバル金融機関として、現状維持ではなく、どんどん進化していく、という姿勢の表れと捉えられます。全社的に方向性と方法を共有する戦略的なグループと言えそうです。※マウスオーバーで拡大
スローガン
三菱UFJモルガン・スタンレー証券独自のものとしてコアメッセージを定めています。※マウスオーバーで拡大
経営ビジョンがMUFGグループでほぼ共通・同じ内容であるため、コアメッセージで各社の思いをしているものと推察されます。
「大切なものを、あなたと。」に込められた思いは、顧客のパートナーとして、「将来にわたって『大切なものを』を相談いただけるだけの信頼関係をしっかり構築できる証券会社」でありたいというものです。
その基盤には、「最先端の金融技術を取り入れながら顧客のさまざまなニーズに応えていく中で、顧客のニーズを深く理解しそれを具体的なものにしていくのは人、つまり、証券ビジネスは人が基本である」という発想があります。
総じて、堅実性や安定性が重要であるものの、従来のようにそこにとどまらず、進化、それもグローバル金融への進化への言及が目立ちます。堅実性を基盤としながらも、コアメッセージ見受けられるようなエモーショナルであり進化を希求する企業姿勢が見受けられます。
企業ストーリーで使用される言葉を分類整理すると、下図のように表現することができると思います。※マウスオーバーで拡大
中期経営計画
三菱UFJモルガン・スタンレーは、三菱UFJ証券ホールディングスの連結子会社であり、三菱UFJ証券ホールディングスはMUFGの完全子会社であるため、いずれも非上場会社であり中期経営計画は公表していません。MUFGはグループ一体経営を強く意識して行っていることを対外的に公表しており、そのため中期経営計画も一体でMUFGとして公表しているものと思われます。したがって、MUFGの企業研究を参照下さい。
求める人物像の推察
求める人物像
企業ストーリー、歴史、財務分析、中期経営計画を統合すると、求められている人材は、「スマートで、堅実性と創造性を兼ね備えた、高い専門性を持つプロフェッショナル」です。
半分は外資系投資銀行という環境であり、成長意欲が高く、高度な専門性を希求し、創造的で進化をし続けていこうとする人材です。
なお、三菱UFJモルガン・スタンレー証券には、一般的なオープン採用とは別に、ホールセール部門(グローバル・マーケッツ、インベストメントバンキング)に配属を行う特定専門業務の採用コースもあります。こちらは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の中のいわゆるエリート採用であり、少数の極めて優秀な人員のみが採用されるコースです。
キーワード
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まとめ
企業理解イメージ図
これまでの概要、歴史、財務分析(ビジネスモデル)、中期経営計画、企業ストーリーを構造化し、イメージ図に落とし込むと下図のようになります。
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スマート、半分外資、グローバルといったイメージだと思います。
世界に選ばれる、信頼、プロフェッショナル、変化というような言葉がキーワードとなります。
なぜこのキーワードになっているかというと、
① 統合合併を繰り返しさらにモルガン・スタンレーと合弁・提携している歴史
② 営業部門とトレーディングに強く、グローバルに強い財務状況
③ MUFGと一体となったグローバル金融グループを目指す将来計画
から、構成されたものです。
そのような歴史・現在(財務・ビジネスモデル)・未来(中期経営計画)となっているのは、企業ストーリーが、創造性・バランス・情熱をそれぞれ高いレベルで表現したものだからだと思われます。
業界内での志望理由
企業分解イメージ図を踏まえ、現在・未来・企業ストーリーの3階層を焦点に、業界内で同社を志望すべき理由を考えます。
1.モルガン・スタンレーとの提携という独自の強み
(現在=財務状況から)営業力、トレーディング、グローバルに強い。
2.MUFGと一体のグローバル金融グループを目指すという独自の方向性
(未来=中期経営計画から)銀行系証券として一体となって展開していく将来計画。
3.創造性と堅実性と情熱がバランスのとれた企業姿勢
(企業ストーリー・未来・現在から)三菱UFJモルガン・スタンレー証券ならではバランスの取れた企業姿勢。
宿題:各社のHP、IR資料、中期経営計画を熟読し、理解を深めましょう。
【出典】:2019年12月同社HP、2019年12月まで発表の同社決算短信、中期経営計画、その他同社公表資料