三菱UFJ銀行(MUFG)
メガバンクのトップに君臨する三菱UFJ銀行について研究を行います。
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会社概要
会社概要
設立:1919年
資本金:約17,119億円
拠点数:国内754 海外79
連結対象会社数:491
従業員数:単体約34,101名
事業内容(事業部門)
法人リテール部門、コーポレートバンキング部門、グローバルCIB部門、グローバルコマーシャルバンキング部門、市場部門、コーポレートセンターの5部門。国内は、リテール・中小企業と大企業で部門を分け、グローバルは投資銀行と商業銀行の機能で部門を分けている。そのほか、商業銀行や投資銀行とは異なる機能とし市場部門としている。
歴史
源流は、明治期に世界中で活躍した横浜正金銀行等にまで遡ります。合併の流れは下図の通り。現代においては、2004年「三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスによる経営統合」を発表。総資産約190兆円におよぶ総合金融グループが誕生するとともに、2006年には「三菱銀行」「東京銀行」「三和銀行」「東海銀行」を源流に持つ「三菱東京UFJ銀行」が設立されました。さらに、グループ一体運営を国内外に明示しブランドの統一を図るべく、2018年4月、名称を 「三菱UFJ銀行」(英語名:「MUFG Bank」)へと変更しました。※マウスオーバーで拡大
財務分析
各メガバンクとも、親会社であるグループ会社を上場させ、銀行そのものは100%子会社化し、単体での決算公表は行っていないため、グループの財務情報による比較です。
損益状況(収益性)
基礎情報
<グループ>
<グループ>
売り上げに相当する連結業務粗利益、営業利益に相当する連結業務純益、純利益ともに減少傾向にあります。ただ、純利益は8-9千億円と日本最大級です。
※単位:億円
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<単体>
銀行を見てみると、グループのほとんどを占めていることがわかります。グループと異なり、2018年度は業務粗利益・純利益とも改善しています。
※単位:億円
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財務状況(健全性)
自己資本比率
<グループ>
総自己資本比率、Tier1比率ともに安定して推移しており、堅調な財務体質と言えます。
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預貸額
<単体>
預金・貸出額ともに安定的に推移しており、堅調な預貸状況と言えます。※億円
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地域別貸出額
<グループ>
全地域で安定的な割合で推移しており、安定的な地域貸し出しポートフォリオといえます。※億円
※マウスオーバーで拡大※3年平均
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事業構造(安定性)
セグメント業務純益
<グループ>
リテール、法人、国際、市場と安定的な事業ポートフォリオとなっています。特に、国際の金額が最も大きく、グローバルバンクに向けて進化を進めていると考えられます。※百万円
※マウスオーバーで拡大※2018年度
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会社別利益
<グループ>
銀行が圧倒的な割合を占めています。単体でも6割程度ですが、米州ホールディングスやクルンシィ、モルガンスタンレーを含めた連結では8-9割を占めています。銀行連結に寄った利益構造となっています。※億円
※マウスオーバーで拡大※2018年度
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※三菱UFJニコスの赤字があるため、合計は100%にはならない
総じて、銀行が非常に強く、銀行自体は真にグローバル化・総合化しており、非常に堅調かつ安定した状況と言えます。
企業ストーリー
三菱UFJフィナンシャル・グループは、ミッション→ビジョン→バリューの順で設定しています。
ミッション
総じて、安定と信頼に基づく、社会の基盤であるという堅実な使命を掲げています。堅実性を中心に、発展・進化に関する表現が含まれています。※マウスオーバーで拡大
ビジョン
グローバル金融グループを目指しています。財務状況もここに準拠しており、国際関係部門の利益が最大となっているのはここに起因します。※マウスオーバーで拡大
また、ビジョンをキャッチコピー化したものとして、グループメッセージがあります。クオリティ、明日、世界、という用語が何より重要だということです。※マウスオーバーで拡大
ビジョンでもミッションでも、情熱に関する表現が入ってこない点、世界目線が入ってくる点が、三井住友フィナンシャルグループとの大きな違いです。
バリュー
ミッションに基づく、信頼・信用が第一にありながら、プロフェッショナルや成長と挑戦といった、進化に関するバリューが言及されています。グローバル金融機関として、現状維持ではなく、どんどん進化していく、という姿勢の表れと捉えられます。全社的に方向性と方法を共有する戦略的なグループと言えそうです。※マウスオーバーで拡大
総じて、銀行である以上、堅実性や安定性が重要であるものの、従来のようにそこにとどまらず、進化、それもグローバル金融への進化への言及が目立ちます。堅実性を基盤としながらも、そこにとどまらない企業姿勢が見受けられます。
ここから、進化=グローバル金融を大切にしているため、モルガンスタンレーへの出資やアユタヤ銀行の買収といった巨大なリスクを負う出資も、積極果敢に行い、国際部門が利益のトップになるような進化をこれまで遂げてきたことが分かります。
また、収益性や健全性が安定しており、地域貸し出し割合やセグメント利益割合が非常に安定しているのは、堅実性も基盤として非常に重要視していることに起因すると思われます。したがって、堅実性を維持する範囲内で、積極的に進化に向けて挑戦していく企業グループだという理解ができます。
ここまで理解すると、グループメッセージがまさに、これまで理解してきた企業姿勢をストレートに表していることがわかります。
企業ストーリーで使用される言葉を分類整理すると、下図のように表現することができると思います。※マウスオーバーで拡大
中期経営計画
三菱UFJフィナンシャル・グループは、2018年中期経営計画を発表し、そこから変更なく維持しています。
方針
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タイトルは、「11の構造改革の柱」です。デジタル対応を中心に、一流のグローバル金融グループになるための、具体的な構造改革が中期経営計画として盛り込まれています。
他業種と比較し、中期経営計画にビジョナリーな部分や方針ではなく、具体的な方法論(11の構造改革)を中心に盛り込むという点で、地に足の着いた堅実性が感じられます。
戦略
11に分類していますが、①・②・⑪はデジタル化関連、③~⑩はグループ一体化に関する構造改革です。これまでは海外銀行を買収しグローバル化の拡大を行ってきましたが、今回はその点の言及はありませんでした。
拡大は一旦止め、グループ一体化による強化とデジタル化への進化という「強化」を行う期間と捉えているということが読み取れます。
施策
デジタル化の中心は、下図の通り、顧客・業務・価値提供の全てにわたります。この中期経営計画に基づき、Akamai社と合弁事業によるオンライン決済サービスGO-NETの開発、MUFG Walletのリリース、AIチャットボットやAI OCRの開発、ブロックチェーン技術を活用した次世代金融取引プラットフォームProgmatの開発、など、本格的にデジタル対応を行っています。※マウスオーバーで拡大
グループ化は、不動産・資産運用・機関投資家向け・グローバルCIB・海外運営の各分野において、グループで一体化し、最適化させたうえで、グループのノウハウや人材を結集して高度化していくということです。
求める人物像の推察
求める人物像
企業ストーリー、歴史、財務分析、中期経営計画を統合すると、求める人材は、グローバル志向とバランス感覚を持った挑戦者です。
銀行という社会の公器である以上、堅実性は基盤であり必ず必要となりますが、それ以上にグローバル金融グループへの進化、デジタルへの進化、といったグループを強化し、進化に寄与する人材を求めています。そのため、挑戦、主体性、創造性、といった未来を切り開く先進性な知性とバランス感覚を兼ね備えていることが最も重要です。
キーワード
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まとめ
企業理解イメージ図
これまでの概要、歴史、財務分析(ビジネスモデル)、中期経営計画、企業ストーリーを構造化し、イメージ図に落とし込むと下図のようになります。
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スマート、エリート、といったイメージだと思います。このイメージを分解すると、進化と堅実です。銀行としての信頼を重要視している堅実性、グローバル金融としての進化、ということに分解できます。
なぜこのキーワードになっているかというと、
①明治期からグローバル銀行という歴史
②グローバル化しながらもバランスのとれた財務状況
③拡大から強化路線へと進んだバランスを意識した将来計画
から、構成されたものです。
そのような歴史・現在(財務・ビジネスモデル)・未来(中期経営計画)となっているのは、企業ストーリーが、信頼とグローバルを謳う内容であるためです。
業界内での志望理由
企業分解イメージ図を踏まえ、現在・未来・企業ストーリーの3階層を焦点に、業界内で同社を志望すべき理由を考えます。
1.真のグローバル金融グループ
(現在=財務状況から)モルガンスタンレーへの出資参画など、リスクを厭わず、真のグローバル金融グループへ進んでいること。
2.進化へのコミット
(未来=中期経営計画から)グローバル金融としての拡大、特にデジタル化への確実な対応、といった進化・強化への意識と行動が顕著であること。
3.バランス(堅実性と進化、事業)
(企業ストーリー・未来・現在から)事業のバランス等、ビジョンから事業ポートフォリオや財務までのあらゆる階層で、攻めの姿勢(進化)と守りの姿勢(堅実性)バランスが取れており、またバランスを重要視する、王道ともいえる経営状況。
宿題:各社のHP、IR資料、中期経営計画を熟読し、理解を深めましょう。
【出典】:2019年12月同社HP、2019年12月まで発表の同社決算短信、中期経営計画、その他同社公表資料