F-2 グループディスカッションの位置づけ
仕事の成果を出せる素養があるのか
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名著の教えから導く就活の本質
あなたは、なぜ採用プロセスでグルディスが課されるのかを考えたことがありますか。
ESや面接は、間接的及び直接的に応募者と対話を行い、応募者を知ることで採用可否を評価するため、なぜ課されるのかは理解しやすいと思います。
しかし、グルディスは、企業の採用担当者と直接的にも間接的にもやりとりを行うわけではありません。応募者間でのやりとりを見て、評価を下すという、少し性質の違うプロセスです。
さらに、全企業の採用プロセスでグルディスが課されているわけではなく、採用プロセスにグルディスがある企業とない企業があります。
では、面接などの一般的なプロセスとは異なる性質のグルディスを、なぜ採用プロセスに組み込むのでしょうか。何が目的で組み込んでいるのでしょうか。
これまで説明して来たように、企業にとって採用とは投資活動であり、企業は、素養と心の観点で投資対象として適切かを判断するために様々な審査を行います。グルディスも審査の一つです。そして、グルディスの内容を見ると、グループに分かれ、ある課題が与えられ、制限時間内にその課題についての解決策を考案し、最後に代表者が発表する、というようなものだと思います。このプロセスにおいて、あなたの企業への思いを表現する機会はありません。
したがって、企業にとって、グルディスとは、素養のみに焦点をおいて見極めるためのプロセスといえそうです。
言い換えると、「企業にとって、就活生の素養をしっかり見極められるプロセスだから、グルディスを課している」、が一定の答えになりそうです。逆に言えば、グルディスを採用プロセスに組み込んでいない企業は、素養ではなく、心を重要視している、ということになります。
前段から、グルディスという採用プロセスは、素養のみに焦点をおいているため、素養を「しっかり」見極められる、ということはわかりました。そうすると、つぎは、そもそもなぜグルディスで素養が見極められるのか、という疑問がでてきます。
わざわざグルディスを課すということは、グルディスのプロセスをしっかり行えることが素養有りとみなされる、つまり将来企業に利益貢献しうる人材だとみなされるわけです。投資見極めである採用活動において重要視しているということは、グルディスをしっかり行えることが、投資に適していると判断できる、つまり業務で成果を出すことに直結している、といえると思います。 そして、直結しているということは、内容・プロセス・考え方・能力などの諸要素が、同じもしくは類似していると考えられると思います。
したがって、論理的に考えた場合、「グルディスで成果を出すために必要な諸要素は、業務で成果を出すために必要な諸要素に類似しており、素養を評価しやすい」から、企業はグルディスを課す、という考え方ができます。
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この考え方が正しいかを検証しましょう。その為には、そもそも仕事とは何か、企業とは何か、を考える必要があると思います。社会人になるということは、価値提供し、対価を得、生計を自身で立てる立場になること、だと説明しました。そして、仕事とは、価値提供を行い、対価を得る行為を意味します。個人の仕事が集まって、組織としてクライアントに価値を提供し、対価を得る利益追求共同体が企業となります。つまり、日系・外資を問わず、どんな企業であれ、その本質は「価値を提供すること」にあるわけです。
そして、価値を提供するということは、ニーズに応えることであり、ニーズとは課題です。したがって、価値提供とは、ほぼイコール「課題解決」という意味になります。つまり、企業がすべからく求めているのは、「課題解決の能力」
なのです。
そして、企業は様々な所属員で構成され、協調して価値を提供します。 そのため、グルディスで、グループで協調して問いに対して答える、ということを通じて、利益貢献に直接的に資する「協調して課題解決する力」
を見ることができるわけです。
前回、課題解決力とは、本質的なものと特定のものに分かれ、本質的な課題解決力は、適切な問を立て、知恵を結集する力だと、説明しました。まさに、企業においても、顧客の課題を設定し、知恵を結集して課題解決を行うことで、クライアントに価値を提供し、対価を上げるわけです。
したがって、企業がグルディスを行う理由は、「グルディスのプロセスが仕事のプロセスに類似しており、成果を出す要素も類似しており、直接的に素養を計ることができるため」
となります。
そして、グルディスを採用プロセスに組み込む企業は、この課題解決の考え方は、グルディス後の面接でも当然問われます。わざわざ、課題解決能力を確認するグルディスを採用プロセスに組み込んでいる時点で、この能力を重要視しているからです。
そして、グルディスで求められる能力は、社会に出てから仕事において成果を出すための能力とおおむね同じであり、タイミングの速い遅いはあるにしても、どちらにせよ課題を解決することを求められることから逃れることはできない
と思います。
なので、この機会にグルディスにしっかり向き合い、課題解決力を高めるようにすべきなのです。
次回はいよいよ具体論に入ります。まずはグルディス進めるための具体的なステップを考えます。
今回のポイント
1.グルディスは、就活生の素養を見極めるために行われる
2.グルディスのプロセスは、業務プロセスと同じ
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基盤とした名著
武経七書の一つ。古今東西の兵法書のうち最も著名なものの一つである。孫氏は戦争の記録を分析・研究し、勝敗は運ではなく人為によることを知り、勝利を得るための指針を理論化して、本書で後世に残そうとした。最も重視した点は相手を知り、戦わずして勝つこと。
ここから、相手の目的や求めることを理解しておくことが勝敗を左右することを示唆してくれます。