F-1 グループディスカッションとは何か
良い問いを立て、知恵を結集する議論
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名著の教えから導く就活の本質
グループディスカッション(以降、グルディス)と聞くと、「私は苦手だ」、「できればやりたくない」、などといった声が聞かれます。
それは、グルディスとはそもそも何か、何が正解なのか、といった、グルディスそのものやあるべき姿についての理解がなされていないからだと思います。
理解がなされていないのは、グルディスについて、きちんと説明をしてくれる周りの人がいなければ、情報もないからだと思います。だから、苦手意識が芽生え、避けられるものなら避けたい、といった心情になるのではないでしょうか。
しかし、グルディスは、大切なことを教えてくれます。
では、グルディスをどのように理解すればよいのでしょうか。 一体、グルディスとはなんなのでしょうか。
グルディスとは、その名の通り、グループでディスカッションすることです。ディスカッションとは、互いの意見を述べて論じ合うことです。
論じ合う目的は、論点に対しての答えを出すためです。答えを出す目的は様々でしょう。学生の研究かもしれないし、企業の既存事業の改善かもしれないし、新規事業の開発のためかもしれません。
いずれにせよ、何かの答えを出して、より良くしようとしていることが共通点です。つまり、論点とは課題と言い換えることができます。
ここから、「課題を解決するためにグループで論議すること」、がグルディスであるといえます。
課題を解決することがディスカッションの目的であるならば、有益なディスカッションにするために必要な力は、課題解決力となります。
課題解決力は、どの課題や論点にでも共通する「本質的な課題解決の力」
と、その課題や論点で有用な「特定領域の課題解決の力」
の二つに分かれます。後者は知識やノウハウ、と言い換えられます。
では、前者の本質的な課題解決の力とは何でしょうか。
課題解決である以上、最終的には最適な解決策を提供することが目的です。最適な解決策を提供するには、最適な解決策を考案する必要があります。
そして最適な解決策を考案するには、みんなの知恵を結集してまとめ上げる必要があります。三人寄れば文殊の知恵という言葉の通り、一人よりもグループの方が良い結果を出す可能性が高いからです。
したがって、本質的な課題解決力の一つは、「人員の力を引き出し、知恵を結集する力」
であるといえるでしょう。
課題を解決するには、そもそも課題が良い課題である必要があります。
課題だと認識していたものが間違っていれば、その後の解決の方策がいくら優れていたとしても、意味を成しません。良い課題解決のためには、良い課題を設定することこそが、何より重要だといえます。
したがって、本質的な課題解決の力の二つ目は「良い問いを立てる力」
と言えます。
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したがって、本質的な課題を解決する力とは、「最適な問を立て、知恵を結集してそれを最適に解決する方策を導き出すこと」
となります。より狭義では「問いを立て知恵を結集する力」といえます。
感覚的にも、この2点さえ整っていれば、自然と良い答えが出てくるとわかっていただけると思います。
なお、グルディスで相手を否定してはいけない、とよく聞くと思いますが、これでなぜ否定してはいけないかが深く理解できたと思います。なぜなら、相手を否定する事は、本質的な課題解決力の一つである「知恵を結集する」とは真逆のことをしているからです。
相手を否定するのではなく、相手の意見の多くが違ったとしても、どこか一部で活用・反映し、議論を発展させるものがないか、という目線で、よいところや参考になるところを探すべきなのです。一部でも活用すべきところ、その一部を見ることもなく、否定してしまっては、知恵を結集するとは真逆となってしまいます。だから否定をするなと言われるわけです。
また、日本の教育を受けている皆さんは、本質的な課題解決にとって最も重要な「問を立てる力」が絶望的に弱いのです。それは日本の教育が、問いに対して答えることのみを教え、そもそも問を立てることを教えていないからです。だから、あなたはグルディスに苦手意識をもってしまうわけです。
グルディスとは何か、という問いに対しての答えは、「問を立てる力と知恵を結集する力という本質的な課題解決能力を用いて、課題を解決すべくグループで論じるもの」、であると思います。グルディスが何かがわかったので、何が大事なのかもわかり、自分がどこの部分に不安を感じるのかも分かるようになったと思います。
グルディスとは何かが分かったところで、次回はグルディスの採用における位置づけを考えます。
今回のポイント
1.グルディスでは、本質的な課題解決力が大切
2.本質的な課題解決力とは、問いを立てる力と、知恵を結集する力の2つである。
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基盤とした名著
戦争についての記述はこの著作の最も注目すべき箇所であり、定義・本質・性質・現象など戦争に関する幅広い事項が議論されています。「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である」という記述はこの著作の戦争観を端的に表したものの一つです。
クラウゼヴィッツにとって戦争とは政治的行為の連続体であり、この政治との関係によって戦争はその大きさや激しさが左右されます。
この教えと同様に、グループディスカッションの定義・本質・性質・現象をつかみ、ESは就活の各ステップとの連続体であることを理解することを示唆してくれます。