E-6 回答設計方法
逆算の組み立て
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名著の教えから導く就活の本質
前回は、ESを書くにあたり、最初のステップである「問いの設計」を行いました。今回は、問いの分析で得た求める人物像に対して、各問でどのように答えていけば、その証明ができるか、という回答の設計を行います。
ESを書くにあたって、問いの分析ができれば、求める人物像とその焦点が明確になります。これは、言い換えれば、ESのゴールです。
ESのゴールが分かれば、あとはESの各問に対する回答を通じて、ES全体としてその求める人物像と焦点に自分が適合していることを示すことができればよいわけです。
そのためには、各問の回答で、何に焦点を置いて、どのような構成で回答していくか、の回答の設計が必要です。
これがESの分析に続く、ESの第二ステップです。では、回答の設計はどのように行えばよいのでしょうか。
回答設計のプロセスは、「ES全体のストーリーを構築すること」と「各問いの回答を設計すること」
です。
まず、「ES全体のストーリーの構築」は、問いの分析で焦点が明確になった求める人物像にマイストーリーを合わせること
です。
例えば、焦点が明確になった求める人物像が、新しいことへの挑戦が最も重要な要素であった場合、マイストーリーも新しいことへの挑戦に焦点を当てます。
つぎに、「各問いの回答設計」は、焦点を調整したマイストーリーをもとに、各問いに合わせて回答内容を設計すること
です。
1. まずは、各問いのメッセージを決定します。
2. その後、各問のメッセージの根拠となる経験を、マイストーリーの中から取り出します。ここで、ESの焦点に合わせ、「何をどこまで記載するか」、「どこに重点を置くか」の記載範囲の選択を行います。
3. さらに、「結果として得た経験や能力は何か」、「それを入社後にどのように生かしていくか」、という締め段落を設定します。この内容も、ES調整後のマイストーリーから、企業の求める人物像に合致する方向で記載します。
これをそれぞれの記載する内容をイメージしながら、おおよその字数を割り振ります。ここまでイメージできれば、ESの回答設計の完了です。
つまり、問いに対して、冒頭で経験を一言で説明したのち、メッセージとその定義、その根拠となる経験、得たものと入社後どう生かしていくか、という三段階の構成で考えます。
こうすることで、ES全体及び各問が首尾一貫し、ESのゴールである求める人物像に対して最適な焦点と根拠で説得することが可能となるわけです。
一般的なESは、ゴールもなければ焦点もなく、淡々とその時の状況を説明するにとどまるため、読んだ後に書き手の姿が浮かび上がってきません。しかし、この本質的な書き方を行えれば、ESが一遍のストーリーとなり、そのベクトルは、相手が求めているものと合致するため、非常に印象に残るものとなります。
各段階について、前回の例を活用しながらもう少し詳しく見てみましょう。
前回は、ESの焦点を踏まえた求める人物像としては、「どんな困難があっても、ビジョンを共有して社内外を問わずにそれぞれの内から湧き出る力を引き出すことのできる強い信頼とリーダーシップがあり、チーム一丸となってそれを乗り越える方法を冷静に考え正面から向き合うことのできる、新しいことへの挑戦者」でした。
したがって、焦点は、信頼、リーダーシップ、困難を乗り越える、挑戦、です。
問いの分析で行った用語の定義と、焦点をもとにマイストーリーをES全体のストーリーに調整します。
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そのうえで、マイストーリーのバリューファクターの下層にある成長条件の部分に、ESでわかった具体的な焦点を一要素として組み込み、それを証明する経験を加え、結果として、なりたい自分のポイントの一つに組み込む、という作業です。
下図で言えば赤枠線部分をプロットする作業です。
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つづいて、ES用に調整したマイストーリーから、各問のメッセージを設定します。ESの問いにあわせて、マイストーリーから引っ張ってきます。リーダーシップであれば、問いの分析で定義したリーダーシップに適合するように具体的に設定します。
それぞれの問いで、どのようなメッセージとするかが決まれば、ES全体として、求める人物像であるというメッセージになっているか、を確認します。
その後、メッセージの根拠となる経験をマイストーリーから取り出してきます。
その際、字数制約に応じて、メッセージを焦点として、どこまで書くか、何を重点的に書くかを決めます。ここがポイントの一つです。
一般的なESでは、経験を客観的に解説するにとどまり、焦点がないため、メッセージもない、という風になっています。この経験の概要を書く際に、焦点を強く押し出すことが必要です。経験の詳細はさほど要りません。
そして、最後に経験で得たものとそれを入社後どう生かしていくか、を記載します。
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この回答設計により、ES全体の首尾一貫性、各問で求める答えへの整合性、読みやすい論理構成、マイストーリーとの整合性、をすべて網羅することができ、後から書き直す必要がなくなります。
結局、一般的なESの書き方は、ゴールがない、メッセージがない、それゆえ焦点がない、という状況だから、淡々と客観的な説明をすることしかできず、結局あなたの良さやあなたが投資対象として適格だということは何も伝わらないESとなるわけです。
回答設計では、全体からゴールと焦点を定め、そこに向かってどのようなメッセージを発すれば伝わるか、そのためにはどの経験をどこに焦点をあててどの範囲まで書けばよいか、という逆算の組み立て
で考えています。ここが一般的なESの書き方とは決定的に違うところです。
このプロセスは、まさに業務と同じです。ゴールから逆算して、そこに向かって適切にたどり着くように、現状と背景を整理・理解し、問いを立て、対策を設計し、実行する、という点は業務においても常に使う思考法なのです。この思考法で、ESを組み立てるということは、単にESが良くなるということにとどまりません。あなた自身の成長を惹起します。
ここまで読み進めた皆さんの中には、お気付きの方もいると思いますが、そもそも名著で就活の内容全体でその構成になっています。そもそも〇〇とは何なのかの定義を考え、その考え方を整理(戦略の設計)し、その方法論を整理(戦術の設計)し、実際に実行する、というプロセスで構成されています。ぜひ参考にしてみてください。
今回は、ESの書き方の2ステップ目にあたる回答設計を行いました。回答設計ができれば、あとはその通りに記載するだけです。これで本章並びにESの定義・考え方・方法論の説明は完了です。
次章は、グループディスカション(以降、グルディス)について説明していきます。
今回のポイント
1. 回答の設計プロセスは、「ES全体のストーリーを構築すること」と「各問いの回答を設計すること」
2. ES全体のストーリーの構築は、問いの分析で焦点が明確になった求める人物像にマイストーリーを合わせること
3. 各問いの回答設計は、焦点を調整したマイストーリーをもとに、各問いに合わせて回答内容を設計すること
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基盤とした名著
野生の思考とは、眼前の事象を考える際に、その事象と別の事象との間にある関係に注目し、それと類似する関係性を持つ別の事象群を連想しつつ、それらを再構成することです。
そして、それらの事象に異なる意味を与え、新しい「構造」を生み出せるとしています。
その思考の枠組みを就活に活用して、構造化しています。その一つが、ES全体のストーリーと各問の関連を見抜き、定義し、構造化する方法論において活用しています。