E-5 問いの分析の方法論
問いを企業が求める意味に定義し、求める人物像を洗い出す
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名著の教えから導く就活の本質
前回は、ESの正しい書き方を説明しました。問いの分析、設計、記載の3段階であり、各概要を理解できたと思います。今回は、第一段階である問いの分析について説明します。
これまでのESに関する説明で、ESにおいて、問いをそこそこにどう答えようか考えるのではなく、問いの分析が極めて重要であることは十分に理解できていると思います。ESには、問いの趣旨だけではなく、使っている言葉、文字数、問いの順序、そのすべてに意味があります。
それは、企業からのメッセージでもあるわけです。このメッセージをきちんと受け取り、ES単体として適切なものに仕上げつつ、次の面接などの選考で、自分を縛るのではなくむしろ自分が投資対象として適切だと後押しをしてくれるESに仕上げていきましょう。
それでは、問いの分析の段階をみてみます。問いの分析は、「ESの分析」、「求める人材像の設定」の2ステップ
です。
ESの分析は、
・まずESで聞かれている重要な用語を見て、要素を洗い出すとともにその趣旨を把握
します。
・つぎに、使っている用語を企業が考えている意味に定義
します。
・そして、問いの順序や文字数から、企業が求めている要素の優先順位を設定
します。
ここまでがESの分析です。
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例えば、志望動機の文字数が少ないあるいは最後にある場合、志望動機の優先順位は低いと判断できます。投資対象としての評価基準である素養と心のうち、素養を重視しているということです。
また、志望動機以外の内容が、挑戦経験、リーダーシップ経験、困難を乗り越えた経験、だったとします。挑戦、リーダーシップ、困難を乗り越える、といずれも趣旨は似ています。前に向かって進むイメージの言葉ですね。
しかし、それぞれの言葉について、企業がどのような意味で使っているかが判然としません。判然としないまま書き始めると、方向は合っていても、道筋をたがえる可能性があります。挑戦をどういう意味で使っているのか。どんな挑戦が適切なのかを考える必要があります。個人なのかチームなのか、高い目標への挑戦なのか難しい問題への挑戦なのか、自分のビジョンに関わる重大な挑戦なのかそうではないのか、など様々な切り口で挑戦という言葉をとらえることができてしまいます。困難やリーダーシップ、なども同じです。
したがって、抽象的な言葉を企業が求める意味に定義しなおす必要があります。定義するにあたっては、企業研究で理解した内容を駆使して、定義します。そして、定義した後に、要素の優先順位を整理すれば完了です。
要素とその定義及び優先順位が洗い出されたところで、つぎはその要素をまとめ、ES単体から読み取れる求める人物像を明らかにします。
その後、企業研究で明らかになっている求める人物像との整合を図り、特に重要な焦点を決定
します。
ES単体から読み取れる求める人物像を明らかにするには、要素をまとめます。
例えば、挑戦、リーダーシップ、困難を乗り越える、という順序で、定義は、「挑戦=新しいことへの挑戦」、「リーダーシップ=チームの力を最大化する」、「困難を乗り越える=困難に直面しても対処法を冷静に考える」だとしましょう。そうすると、「どんな困難があっても、ビジョンを共有して内から湧き出る力を引き出すリーダーシップを持ち、チーム一丸となってそれを乗り越える方法を冷静に考え正面から向き合うことのできる、新しいことへの挑戦者」が求めている人物像となります。
ES単体から読み取れる人物像が明らかになった後に、企業研究で抽出した求める人物像との比較を行います。
ES単体と企業研究からの求める人物像がほとんど一致する場合は、その確認をするだけで完了します。
一方で、多少異なる場合は、その整理を行う必要があります。ES単体からと企業研究からの求める人物像が完全に合致しない場合は、どういう場合でしょうか。
それは、企業研究で求める人物像をベースに、その中でも特に重視する焦点が示されているものがES単体からの求める人物像です。ESは今年度の採用ですから、今年の採用で重視する焦点が示されているということです。
例えば、企業研究ではESには記載のない「信頼される人」が要素としてあったとしましょう。その場合、信頼を企業が思っている意味に定義したうえで、少しES単体からの求める人物像に反映させる必要があります。
信頼の定義を、「能力的な信頼を超えた人間としての信頼」だとすれば、先ほどの例を使えば、「どんな困難があっても、ビジョンを共有して社内外を問わずにそれぞれの内から湧き出る力を引き出すことのできる強い信頼とリーダーシップがあり、チーム一丸となってそれを乗り越える方法を冷静に考え正面から向き合うことのできる、新しいことへの挑戦者」のようになると思います。
以上が問の分析の段階の内容です。ESの分析と求める人物像の洗い出しを行うことによって、ESのゴールが明確になりました。
ゴールが明確になれば、そこに至る最適な道筋を描くことができます。
あなたが、ESで苦労するのは、問いの分析を行わず、ゴールを明確にしていないため、何が正しいか、何が適切かの判断ができない為です。この問いの分析こそがESにおいては最も重要であり、最適なESに至るうえで半分以上は問の分析が占めていると考えてください。
今回は、問いの分析の段階について説明しました。次回は設計の手法を説明します。
今回のポイント
1. ESの分析とは、各問いの要素を抽出し、それぞれを企業の求める意味に定義した後に、要素の優先順位を整理すること
2. 求める人材像の設定とは、要素をまとめてES単体から読み取れる求める人物像を明らかにし、企業研究と照らし合わせて調整すること
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基盤とした名著
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