D-1 スコーピングとは何か
新しい就活の段階
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名著の教えから導く就活の本質
今回は、新しい段階としてスコーピングという段階の提案をします。
ここまで本質的な就活のステップを踏んでいれば、本質的な自己分析を行ってマイストーリーを構築し、本当の自分に出会えたと思います。そのうえで、本質的な企業研究を行い、本当の志望先を見出せたと思います。一般的には、このあとはESといった具体的な選考プロセスに入っていますが、選考プロセスの各論に入る前に、実はもう一段階必要です。
それは、マイストーリーと企業研究を踏まえて構築した自分を採用すべきだというストーリーを構築し、志望業界や志望企業に合わせて焦点や表現を調整するという段階です。
この段階に至る過程で、マイストーリーがあり、マイストーリーによって選定した志望業界と志望企業及びそこに対しての企業理解、という素材がある状態です。スコーピングにおいて、最初にやるべきことは、この素材をつなぎ合わせて一遍のストーリーにすることです。
そのうえで、そのストーリーの表現、使用する経験、焦点を相手の業界や企業に合わせて調整・選定することです。
この、ストーリーを構築し、相手に合わせて調整する作業をスコーピング
と呼んでいます。それでは、スコーピングの具体的な内容を見ていきましょう。
まず、材料を一つのストーリーにすることから始めます。ストーリーの構成は、4つに分かれます。
・私を語る部分
の4つです。
・相手への理解を語る部分
・私と相手の一致を説明する部分
・そのうえで私が相手の欲しいと思っている人材であることを説明する部分
一つ目は、喜びや苦しみの経験から何のために生きるのかを語り、そこから出てきたマイストーリーを語ります。
つぎに、私はあなたをこう理解している、という企業理解を語ります。この際、企業のビジョン・ミッション・バリューを踏まえた深い理解を語ります。
そして、私とあなたはビジョン・ミッション・バリューなどの各階層で合致していることを示し、だから私はあなたとなら夢を実現できる、という深い志望動機を語ります。
そのうえで、マイストーリー実現のためにこういうことを意識してこういう経験をし、こういう力を育んできたが、それはあなたの求める人物像に必要な素養と合致しており、あなたの会社に入って十分に活躍できる素養を持っている、という説明を行います。
したがって、深い志望動機があるので入ってからこの上なく頑張ることができ、かつ求める人物像こそが私であり、あなたは私を採用すべきだ、というストーリーとなります。これを、各志望業界に向けて作ります。
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ストーリー構築ができれば、つぎは、表現・使用する経験・焦点の調整です。
ここからは業界ではなく特定企業に対して表現を調整していきます。 企業研究によるその企業への理解をもとに、「どこを強調して話すと評価されやすいか」、「どの経験をどのように語ると評価されやすいか」、「使用する言葉はどの言葉を使えば評価されやすいか」を考えるわけです。
たとえばリーダーシップを求めているとして、ある会社では調整型のリーダーを、ある会社では先頭に立って引っ張るリーダーを求めている、というように、同じリーダーシップでも各企業によって求めるものが少し異なります。そこに適切にアプローチしなくてはなりません。したがって、焦点や表現を調整する必要がありますし、そもそも使う経験を変える必要もあるかもしれません。
そうすると、今まで培ってきた本質的な自己分析・企業研究は一つにつながり、志望先に対して私を採用すべきだという一遍のストーリーになります。
ストーリーさえ作ることができれば、あとは、相手の質問の仕方によってストーリーの中から取り出して答えてあげればよく、ESでも面接でも恐れるに足りず、という状況になります。
結果、この後のESや面接などの具体的な選考段階で重要になってくる「首尾一貫性」が出てくるため、印象に残りやすい人にもなれます。
自己分析と企業研究の後にいきなり選考段階に入るのではなく、マイストーリーと企業理解をつなぎ合わせて一遍のストーリーにし、そのストーリーの表現・使用する経験・焦点を相手の業界や企業に調整するスコーピングを行うことで、その後の選考段階を非常に有効に行うことができます。
今回は、自己分析と企業研究を踏まえ、新しい段階としてスコーピングという段階の説明をしました。これで、マイストーリーと企業研究が一つにつながり、相手を説得するターゲットストーリーを作ることができました。
これで本章の内容は終了です。次章では、いよいよ具体的な段階で、ESからみていきます。
今回のポイント
1. スコーピングは、自己分析と企業研究を一つのストーリーにし、志望先に合わせて表現・経験・焦点の調整を行うこと
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企業研究における「場の勝ちと三つの先そして枕のおさえ」の教えの実践として本内容が考案されました。