C-7 現場分析
社員と直接話せる機会を最大限生かす為に
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名著の教えから導く就活の本質
前回は、企業研究の第三段階として、業界内比較を机上分析により行い、その際に意識すべき焦点を説明しました。
今回は、これまで構築した企業研究のストーリーについて、実際に検証をする現場分析の方法を説明します。
これまで、企業研究のステップとして、企業HPやIR資料による机上分析を行ってきました。机上分析の方が、重要かつ多くの情報に短時間でアクセスできるためです。机上分析で、志望業界とその業界内での企業の志望順位がほぼ決定し、志望の理由も明確化した段階で、初めて企業説明会を中心とする就活イベントの活用が始まります。
最初に企業説明会に行くことから就活を開始する一般的なパターンとはかなりずれがあります。それは、机上分析を終えた企業研究の最終局面で企業説明会等のイベントを活用することが最も有効だからです。
では、なぜ一般的に言われている最初ではなく、このタイミングが有効なのでしょうか。
それに答えるためには、企業説明会などの就活イベントでしか手に入らない情報は何か、を考える必要があります。
企業説明会などは、基本的には、公表された情報の中から、多数に対応できるよう最大公約数的に収束した、いわゆるあたりさわりのない概要の情報しか手には入りません。したがって、準備された得られる情報という点においては、企業説明会などのイベントは、机上分析に対しての優位性はありません。むしろコストパフォーマンスを考えれば劣後しているといえるでしょう。
しかし、企業説明会に意味がないといえばそういうわけではありません。そこにその企業を代表する立場で出席をしている人事部やその他の部署の社員がいるというこの1点が、机上分析にはない特徴であるからです。直接社員に質疑を投げかけられるという、「直接的なコミュニケーション」こそが企業説明会の意義
なのです。この機会を逃す手はありません。
では、どのようにすれば、その貴重な機会を活かすことができるのでしょうか。
その答えは、自分の見解に対しての適否を問う仮説検証の場とすること
です。
企業説明会や座談会などで、情報を収集したり雰囲気を理解するための質問をする学生をよく見たことがあると思います。「どういう一日を過ごしているか」、「仕事のやりがいは何か」、といったような類の質問です。しかし、ここまでステップを踏んできたあなたなら、このような個別的質問に意味がないことは、十分に理解していると思います。
なぜなら、ここまで名著で就活を進めてきたあなたには、すでにマイストーリー、企業の評価基準、業界や会社への理解、そしてそれらをかけわせた志望動機を持っています。つまり、就活において、相手に対して私を採用すべきだと伝えるストーリーの骨子が、もうすでにあるわけです。直接的コミュニケーションが企業説明会などのイベントの特徴であるのだから、直接これを実際にぶつけない手はありません。実際に採用を担う人事部やその他部署の社員がいるわけですから。
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実際の現場分析において、仮説検証を行える機会は企業説明会が終わった後になるとは思いますが、社員に質問に行ってください。
そこで、・「私はこういうマイストーリーと企業の評価基準をもって進路選択を考えており、その中で、御社の業界はこうで、御社をこう理解しており、御社でならマイストーリーの実現に最も適切だし、御社でなら私の価値は最大化される、と考えているが、どう思うか」というストーリーの検証
がそれにあたります。
・「マイストーリーと企業理解はマッチしているか」というマイストーリーと企業理解の連関の検証
・「御社や御社の業界をこう理解しているが正しいか」といった企業理解の検証
これらの質問をぶつけ、社員の見解を聞き、「欠けている要素がないか」、「焦点が誤っていないか」、「組み立てを変えた方がよいか」などを確認するべきです。実際にその社員の採用を担う人がいる機会を最大限活用する方法はこれ以外にはありません。
もちろん、企業説明会で語られる内容や言葉の端々にも注意を払ってください。自分のストーリーと適合しているか、ストーリーを表現する言葉まで適合しているか、を確認する機会でもあるので言葉使いにも意識しましょう。
企業説明会を、情報収集の場として捉えるのではなく
、実際に採用を担う人事部やそのほか部署の社員に直接コミュニケーションをとることのできるチャンスだと捉えましょう。そして、そのチャンスを最大限に生かすために、仮説検証を行う場と捉える
ことで、企業説明会は非常に意義のあるものになります。
だからこそ、企業説明会では、ぜひ社員に仮説検証の質問をしに行ってください。そうすることで、あなたのその企業に対する理解はさらに深まりますし、その企業に対して自分を採用すべきだという証明のストーリーも練っていく際にとても参考になると思います。
今回は、机上分析を終えた後に行う現場分析について説明しました。
これで、企業研究の定義・考え方・方法論の説明は完了です。次章では、新しい概念であるスコーピングについて説明していきます。
今回のポイント
1. 企業説明会の価値は社員に直接コミュニケーションを取れること(×情報収集)
2. 自分のマイストーリーに基づいた仮説検証をして活用する
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