B-5 ビジョンフレームワークの活用
正しいかを決めるのはあなたの心
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名著の教えから導く就活の本質
※本内容は、ビジョンフレームワークを活用するプロセスを事例をもとに説明するものであるため、短縮はできません。したがってFull版と同じ内容の提示となります。
今回は、ビジョンフレームワークを実際に活用するための手法と留意点の説明を行います。
前回述べた通り、ビジョンフレームワークは万能ではありません。あなたが自己分析をするうえで、とっかかりすらない状況で、無駄な方向に進まない為の道しるべとして活用して頂くものです。ビジョンフレームワークが有益に機能するためには、自分自身と向き合う覚悟をもって、苦しみながらも考え抜くことです。その苦しみを、有益な苦しみにし、最終的に本当の自分に出会えるためのヒントがビジョンフレームワークです。
では、有益な苦しみにするべく、実際にビジョン構築のためにフレームワークの活用を始めてみましょう。①価値観の抽出
ビジョンを考えるにあたり、あなたが大事にする価値観や思いを抽出することが大事だと前回説明しました。そのために、まずはあなたにとっての喜びと苦しみを考えます。なぜなら、人が思いや価値観を醸成するのは、心が動いたときであり、心が動くとは、ポジティブには喜びを感じたとき、ネガティブには苦しんだとき、であるからです。そして、その思いや価値観が人を動かす最も深い原動力になります。
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・喜びの分解
喜びについては、自分の幼少からの経験を振り返り、自分が喜びを感じたときのことを詳細に思い出してください。なぜ喜びを感じたのか考えて下さい。喜びを感じるには理由があります。喜びを感じたときの状況や環境や条件こそが、あなたにとって大事な価値観になります。
例えば、部活で強い喜びを感じた場合、個人競技の人は昨日の自分を超えていくプロセスが大事になりますし、集団競技の人はチームで一つになる環境が大事になると思います。また、誰に憧れているかを考えてみてください。憧れとはなりたい自分であり、将来深い喜びを感じことのできる自分であります。なぜ憧れているのか、どこに憧れているのかを深く考えることで自分の価値観を洗い出せます。・苦しみの分解
苦しみとは、具体的には、「挫折」と「コンプレックス」です。挫折した経験を思い出してみてください。大いなる挫折である必要は必ずしもありません。なぜそれを挫折と感じたかが重要だからです。挫折した経験を詳細に思い浮かべ、なぜ挫折を感じたかを考えましょう。そしてそれを乗り越えるにはどうしたらよいか考えましょう。それが、あなたの大事な価値観だからです。
また、コンプレックスについては、誰しもなんらかのコンプレックスがあると思います。自分は何のコンプレックスをもっているか考えてみてください。そのコンプレックスは自分にとって、人生に影響を与えるくらい重要か考えてみてください。重要なコンプレックスがある場合、なぜそのようなコンプレックスが形成されてしまったのかの原因を考えてみてください。そして、コンプレックスを乗り越えるためにはどうすればよいか考えてください。コンプレックスの原因と乗り越える方法に、あなたの大事な価値観があります。
喜びと苦しみと考える際に重要な点は、なぜそう思ったか、どうしてなのか、をこれ以上答えられないところまで徹底的に問いかけることです。これらの喜びと苦しみの経験を、詳細に検討し、自分にとって大事だと思われる価値観を列挙してみてください。まずは列挙するだけで構いません。
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②抽出した「思いや価値観」の優先順位付け
喜びと苦しみについて自分との対話を行い、あなたにとって大事な価値観を列挙できたら、列挙した価値観を喜びや苦しみの大きさをもとに、自分の感覚で優先順位を付けます。それが、あなたにとって大事な価値観です。③優先順位の高い価値観を「私は◯◯という価値観のために生きる」という文の中に加える
そして、優先順位の高い価値観から順に、私は〇〇のために生きる、という〇〇の部分に加えていきます。加えるにあたって、自分として納得のいくように何度も試してみる必要があると思います。この際、大変重要な点は、全ての言葉に自分の定義をすることです。
例えば、自分にしかできないことを成し遂げたときに喜びを感じ、部活で目標を果たせず引退し、将来生きる目標を失ったという苦しみを感じている人がいるとしましょう。その場合、まず喜びの価値観を置き、私は「自分にしかできないことを成し遂げる」ために生きるとなります。苦しみの部分を追加すると、私は「部活で目標を果たせず生きる意味を失っているので、社会に出てからは」自分にしかできないことを成し遂げるとなります。
その上で、自分にしかできないこととは何か、成し遂げるとはなにか、の自分なりの定義を考えます。この定義も、なぜを繰り返し続け、これ以上問いかけられないところまで具体化します。成し遂げるとは何か、何を・なぜ・どのように・いつ・どこで・誰と成し遂げるのか…。そうすれば、何のために生きるのか、という問いに対する答えに似たものが出てきます。しかし、いきなり答えは出ません。この答えが自分にとって本当の自分だと思えるまで、喜びと苦難を振り返り、価値観を抽出し、生きる目的に組み込んで整理する、作業を繰り返し繰り返し行います。なぜなのか、どういうことか、を繰り返し問い続け、ビジョンに似たものに含まれるすべての言葉に対して、これ以上ないところまで具体化し、自分なりの定義を与えていきます。
この自分との対話を繰り返し行ううちに、自分の脳、そして心の中も整理されていき、これが私の生きる意味だと、思い定めることのできるものがでてきます。ここが最も難しく、苦しい作業です。ここに正解はありません。なぜなら何が正解か決めるのはあなたの心だからです。そして心が正解だと思えるようになるには、徹底的に考え抜き、この作業を繰り返し、思い定めていくしかありません。この、何のために生きるのか、という生きる意味を問われることに対して答えられるようになることが、大きな山場です。これを思い定めることができれば、その後の歩みたい人生、ありたい自分は、比較的導き出しやすいです。④「何のために生きるのか」の内容に沿った「どんな人生を送りたいか」を言語化
生きる目的が定まったら、その目的を達成するためにどんな人生を送りたいか考えます。
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例えば家族とつつましく幸せに暮らすことこそが本当に大事だとしましょう。この場合家族とはだれでどこまで入るのか、つつましくとは何か、幸せに暮らすとは何かを、実際には定義している必要があります。定義にもよりますが、このような生きる目的の場合は、「家族とたくさん時間を過ごすことのできる人生」、になると思います。この場合も、たくさんとはどのくらいか、過ごすとは何を指すのか、などそれぞれの言葉を定義する必要があります。
定義が、家族とたくさん時間を過ごすことが最も大事な人生であるならば、職業は自由が利くものである必要があります。逆に、家族と安定して過ごすなかでなるべくたくさん時間を過ごす人生であれば、職業は定時に帰れて、かつ極めて安定した職である必要があると考えられます。定義によって、自由な職業と安定した職業と両極端のものが導き出されます。⑤そうした人生を送るためには「どんな自分でありたいか」を言語化 (これがマイビジョン)
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前段の家族とたくさん時間を過ごす人生だとすれば、家族を大事にできる環境と、家族をしっかり養える自分でありたいと考えると思います。この場合も、大事にできる環境とは何か、など一つ一つ定義します。前段の例でいえば、環境を時間と定義するなら自由な自分、環境を経済状況と時間のバランスとするなら安定した自分、が求められるわけです。
各ステップの考え方を見てきましたが、もちろん手が止まって詰まるでしょう。その場合、自分に子供ができたら子供にどうなってほしいかを考えると非常に参考になります。子どもとは自分の分身のようなもので、自分の子供に何を目的に生きてほしいか、どんな人生を歩んでほしいか、どんな人になってもらいたいか、という考えは、実は自分がこうありたい理想の自分を表しているからです。そこがヒントになると思います。
ビジョンフレームワークの各ステップを細かく見てきました。さらに理解を促すために事例を提示します。ただ、事例を読んだとしても完全に理解することはできません。実際に自分でうまくはいかなくともステップに沿って、何度もやってみるしかありません。ビジョンを定めるものである以上、正しい答えなど存在しません。正しいかどうかを決めるのはあなたの心なのです。そして、心が正しいと感じるためには、何度も何度も繰り返すしかありません。
今回のポイント
1 あなたの喜びと苦しみの経験から、価値観を抽出し、「何のために生きるのか」という問いに答えよう。
2 目的を思い定めたら、次は「どんな人生を生きたいか」考えよう。
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基盤とした名著
命題とはある存在するものについて分離または結合されていることを論理的に規定するもの。そして命題を構成する主語と述語の区別、判断の種別、対象や変形について考察されています。演繹的な論理思考を体系化した名著中の名著。この演繹的思考の方法論を用いて、フレームワークを分解・構築しました。
帰納法的論理思考を体系化した名著中の名著。この帰納法的思考の方法論を用いて、フレームワークを強化するとともに、個人が実践する際のステップに落とし込むます。