損保ジャパン日本興亜
損害保険業界3番手を担う損保ジャパン日本興亜の企業研究を行います。
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第一生命保険は、第一生命ホールディングスの100%子会社です。第一生命グループとして、ホールディングス傘下の100%子会社が一体となって経営を行っています。財務情報、中期経営計画はホールディングスとして出しているため、そちらを活用します。
会社概要
会社概要
創業:1888年10月
資本金:700億円
総資産:7兆5158億円
正味収入保険料:2兆1486円
社員数:26108名
代理店数:53734店
事業領域
国内損害保険事業、海外保険事業、国内生保事業、介護・ヘルスケア事業
グループ
損保ジャパン日本興亜を完全子会社とするSOMPOホールディングスの事業ドメインは、国内損害保険事業、海外損害保険事業、国内生命保険事業、介護・ヘルスケア事業という4つに渡ります。そのうち、国内損害保険事業を担うのは、損保ジャパン日本興亜、セゾン自動者火災、DC証券、リスクマネジメントの4つです。そのうち、代理店型損保事業を展開し、SOMPOホールディングスの国内損害保険事業の中核を為すのが損保ジャパン日本興亜です。
歴史
以下のような各社が統合を繰り返し、2014年に現在の損保ジャパン日本興亜が発足しました。主な母体会社は、安田火災海上保険、第一ライフ損害保険、日産火災海上保険、大成火災海上保険です。※マウスオーバーで拡大
財務分析
基礎データ
<グループ>
経常収益及び当期純利益ともに安定しています。東京海上グループ、MS&ADインシュアランスグループに次ぐ規模です。<単体>※単位:億円
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特筆すべきは単体です。正味収入保険料は三井住友海上火災保険を上回り、トップの東京海上日動火災保険に比肩しています。利益は東京海上火災保険とは差が開いており、利益率が相対的に低いリテール領域に強いことがうかがえます。
なお、コンバインドレシオ(正味損害率+正味事業費率、正味保険料収入における支払った保険金や事業経費の割合を表し、健全性を示す指標で低いほどよい)は、2019年には100%を超過しています。※単位:億円
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地域別当期純利益
公開情報はありません。
セグメント利益
<グループ>
国内損害保険が圧倒的に占めています。海外保険が弱い一方で、介護・ヘルスケア事業という独自のセグメントがあります。これは、東京海上グループやMA&ADインシュアランスグループと比較し、海外が弱いため、海外強化ではなく、介護・ヘルスケア事業という独自の方向性を取っているものと思われます。※単位:億円
※マウスオーバーで拡大※2018年度
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種類別正味収入保険料
<単体>
保険の種別においては、東京海上日動火災保険と同様にバランスの取れたポートフォリオとなっています。各割合もおおむね東京海上日動火災保険と同じ水準です。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大※2018年度
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企業ストーリー
SOMPOホールディングスとして、グループの経営理念を定めています。目指す企業グループ像をビジョン、グループ経営理念をミッション、グループ行動指針をバリューと読みかえます。ビジョン
真のサービス産業という表現が特徴的です。※マウスオーバーで拡大
ミッション
損害保険会社共通の、安心・安全が基盤にありますが、最高品質のサービスを提供するという主観的で情緒的な表現が特徴的です。また、幅広い事業活動、健康という点に創造性がみられます。※マウスオーバーで拡大
バリュー
チャレンジ、スピード、シンプルでわかりやすくという表現が特徴的です。※マウスオーバーで拡大
総じて、保険にとどまらず真のサービス業として幅広くスピーディかつシンプルに事業を行っていくという創造的な内容が中心です。そのうえで、チャレンジや最高品質といった情熱に関する表現、安心安全といったバランスに関する表現が同程度にあります。損害保険会社としては、革新的で情熱的で独自の色合いがでた企業ストーリーです。また、お客様視点ということを繰り返し強調している点も特徴です。
企業ストーリーで使用される言葉を分類整理すると、下図のように表現することができると思います。※マウスオーバーで拡大
中期経営計画
SOMPOホールディングスは、2016年に、2016年度から2020年度までを対象に、中期経営計画を策定しています。
<グループ>
方針
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損保ジャパン日本興亜は、「安心、安全、健康のテーマパーク」となることを方針としています。健康を含めていること、テーマパークという表現に特徴がでています。その意味は、戦略を確認するとわかります。
戦略
この長期的目標に対して、東京海上日動火災保険は、選ばれ方の変革、働き方の変革を挙げています。ここからわかるのは、業界最大手として、そのクオリティというものを極限まで追求していこうとする姿勢です。※マウスオーバーで拡大
テーマ―パークになるために、「トラスフォーメーション」を行うとしています。トランスフォーメーションの内容は、各事業の魅力を高め、デジタル技術を活用して効率化させるとともに、新たな事業機会を探求し幅を広げたうえで、グループ内外を連携させエコシステムを構築する、というものです。
つまり、テーマパークのように、各事業がアトラクションのように魅力的であり、最先端で創造的であり、それぞれが連関して一つの世界観を作り出すグループでありたいということです。その方向性が、安心・安全・健康を包括するものです。
施策
セグメント別に、トランスフォーメーションの方法が説明されています。
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最先端テクノロジーの活用、介護・ヘルスケア事業という独自の事業領域の2点が大きな特徴です。
この中期経営計画を踏まえて、SNSでシンプル・スピーディーにユニークで多彩な保険への加入ができる「LINEほけん」の提供開始、12時間単位で加入が可能な自動車保険「乗るピタ!」の開発、SNSを通じて顧客の事故対応を行うサービスの開発が行われました。これらの新商品・サービスからも、損保ジャパン日本興亜が顧客接点に非常に重点を置いていることがわかります。
総じて、革新的かつエモーショナルな内容です。顧客接点を非常に大事にし、最先端テクノロジーを活用して、テーマパークという独自の方向に進んでいます。
求める人物像の推察
求める人物像
以上の内容を踏まえると、損保ジャパン日本興亜が求める人物像は、「革新的かつ情熱的で、常に相手の視点に立って物事を考えることのできるベンチャースピリットのある人材」です。
具体的には、「社会や顧客に対して真摯に向き合い誠実であること」、「新たな価値を生み出すために改善や創意工夫を自立的・継続的に行う力」に分解されます。それらの要素を詳しく説明すると、以下のようになります。
① 社会や顧客に対して真摯に向き合い、誠実であること
これまでの内容を踏まえると、顧客本位の“現場力”という力が求められる
②新たな価値を生み出すために改善や創意工夫を自立的・継続的に行う力
損保ジャパン日本興亜は、設定したビジョンの達成に向けて革新的に物事を推進していく姿勢も伺えます。創造性に富んだ人材が、新しい価値を損保ジャパン、ひいては社会に価値を創作することが期待されていると思います。
キーワード
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まとめ
企業理解イメージ図
これまでの概要、歴史、財務分析(ビジネスモデル)、中期経営計画、企業ストーリーを構造化し、イメージ図に落とし込むと下図のようになります。
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イメージは、革新、熱いといったところだと思います。このイメージを分解すると、真のサービス業、最高品質のサービス、健康、お客様の視点、チャレンジなどといったキーワードとなります。
なぜこのキーワードになっているかというと、以下3点から構成されたものです。
①経営統合を重ねてできた多様性に富む比較的新しいグループという歴史
②介護・ヘルスケア事業という独自の事業部門があること
③安心・安全・健康のテーマ―パークという独自の将来計画
そのような歴史・現在(財務・ビジネスモデル)・未来(中期経営計画)となっているのは、企業ストーリーが創造性に重きをおいたものとなっているからです。
業界内での志望理由
企業分解イメージ図を踏まえ、現在・未来・企業ストーリーの3階層を焦点に、業界内で同社を志望すべき理由を考えます。
1.国内の強さと介護・ヘルスケア事業という独自の部門がある幅の広さ
(現在=財務状況から)国内損害事業が非常に強く安定性がある一方で、介護・ヘルスケア事業という新しい事業があり幅が広いこと
2.テーマ―パークという独自の方向性
(未来=中期経営計画から)最先端テクノロジーを活用した進化と革新的な新事業の開発による安全・安心・健康のテーマパークという独自の方向性。
3.革新的で情熱的な企業姿勢
(企業ストーリー・未来・現在から)経営統合を重ねたことによる多様性に富む文化と、比較的新しいグループでありベンチャースピリットに富む企業姿勢。
宿題:各社のHP、IR資料、中期経営計画を熟読し、理解を深めましょう。
【出典】:2019年12月同社HP、2019年12月まで発表の同社決算短信、中期経営計画、その他同社公表資料