H.I.S
旅行業界の大手であるHISについて研究を行います。
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HISグループは、HISがグループ各社を傘下におく体制とし、一体経営をしています。したがって、HISグループとしての研究とします。
会社概要
会社概要
1980年設立
資本金 約110億円
従業員数 連結約18,393名
連結子会社 148社
事業領域
「交流創造事業」
HIS JAPAN(国内の旅行、インバウンド)、海外旅行、電力事業、テーマパーク事業、ロボット事業、ホテル事業、損害保険事業、九州産交グループ事業
歴史
1980年に創業者澤田秀雄氏により株式会社インターナショナルツアーズが設立。格安航空券販売を中心に、航空券とホテルを組み合わせた個人旅行、パッケージ旅行の販売を手がけることからはじまりました。 最初のヒット商品である「インド自由旅行」は、発売時には「インド説明会」という名称でした。消費者に旅のインフォメーションを提供することで、旅行好き仲間に口コミで徐々に広がっていきました。1990年にはHISに社名変更。1993年には新宿に海外旅行のデパート「トラベルワンダーランド」をオープン。1996年にはホテル事業に進出。また同年スカイマークエアラインズを設立し、定期旅客輸送に進出。1999年には協立証券を買収。2005年には九州産業交通株式会社をグループ傘下とします。2010年にはハウステンボスを子会社化。2012年、国際チャーター航空会社パシフィックエアラインズ株式会社を設立、国際チャーター事業に進出します。2015年には変なホテルをオープン。以後発展を続け現在に至ります。旅行斡旋業から、ホテルやテーマパークや航空会社などコンテンツやロジを自らリスクを取って保有してきている点に特徴があります。
財務分析
HISグループとしての連結の財務分析です。基礎データ
<グループ>
業界の特徴として、手数料収入であるため、利益率が他業界と比べ低いです。旅行商品の仕入れにあたる売上原価が高いため売上総利益は売り上げに比べかなり落ち、販促費用などがかさむため販売管理費が高く、営業利益ではさらにかなり落ちます。しかし、HISはコンテンツやロジなどを保有しているため、JTBよりも利益額や利益率が高く出ています。ただ、売り上げ規模ではJTBとは大きく差が開いています。※単位:億円
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部門別収益
<グループ>
旅行事業7割と中心にはありますが、ハウステンボスグループも2-3割と収益の柱となっています。JTBとは異なり、旅行業内でのセグメントではなく旅行業とそれ以外のセグメントという構成が特徴的です。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大※2018年度
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旅行事業内種類別売り上げ
<グループ>
海外旅行が圧倒的な割合を占めています。次いで、積極的に買収を行っている海外の旅行代理店からの売り上げです。※単位:億円
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地域別売り上げ
前年度増減のみの公開であり、収益割合などは公開されていません。
総じて、事業の幅広さと収益性の高さが特徴的です。旅行業を中心としながらも、コンテンツやロジを含めた総合的な旅観光事業を行っています。
企業ストーリー
HISはグループとして、グループ企業理念と企業行動憲章を制定しています。グループ企業理念をミッション、企業行動憲章大切をバリューと読みかえます。ミッション
人類の創造的発展を通じた世界平和に寄与すると代表挨拶でも述べられおり、使命を人類の創造的発展としています。創造的発展の定義はなされていませんが、旅行業を中心としていることから、感動や情緒の創造・発展と推察されます。いずれにせよ、旅行会社や旅行業ではなく、人類の創造的発展を目指す会社です。※マウスオーバーで拡大
バリュー
非常に高潔かつ堅実性あふれるバリューです。視座の高さと視野の広さが特徴です。ここで、旅行商品・サービスの提供と設定されており、あくまでも中心は旅行商品・サービスにあると宣言されています。あえて旅行商品・サービスという表現を使用するところに、旅行を超えて交流創造と表現するJTBとの違いが出ています。※マウスオーバーで拡大
まとめると、創造的発展を目指す事業会社であり、大切な価値観としては視座が高く視野の広い高潔で堅実な人格が重要だと読み取れます。
企業ストーリーで使用される言葉を分類整理すると、下図のように表現することができると思います。※マウスオーバーで拡大
中期経営計画
HISは、特段中期経営計画を定めていません。そのため、2019年10月期決算説明会にて行われた今後の取り組みをもって読みかえます。
旅行事業
<海外における旅行事業>
・M&Aと内部成長により世界の旅行市場の取り込みに注力するとしています。特に、北米に注力すべく、HISカナダホールディングスを設立するとしています。
・ヨーロッパでは、多拠点化戦略により、旅行客と輸送ともにシームレスにつながる方向としています。
・アジアでトラベルテック会社の買収を行うとしています。
<国内における旅行事業>
・羽田空港の発着枠の拡大に伴い、北米・ハワイ・ヨーロッパを中心とする長距離路線の販促の強化を行うとしています。
・また、ハワイ・ヨーロッパ・グアム・クルーズにおいて、差別化を強化するとしてます。
・沖縄の強化、バスツアーの強化
ハウステンボス事業
IPO準備とIR誘致
ホテル事業
新規開業と買収により100軒を目指すとしています。2020年から地方都市と海外展開を本格化させるとしてます。
九州産交グループ
Sakuramachi Kumamotoを中心に据え、「くまモン」を軸にした周遊・連携により、地域経済・観光をリードするとしています。
エネルギー事業
調達先の多様化と契約件数の増加
なお、2019年10月に、2020年の夏をめどにHISを持ち株会社とするホールディングス制に移行すると公表されています。旅行業の伸びしろが十分でないため、旅行業を中心としつつも旅行業にとらわれない事業展開を行っていくという目的です。したがって、今後まずます旅行会社ではなくなり、観光事業者も超えたコングロマリットの方向に行くと思われます。
求める人物像の推察
求める人物像
企業ストーリー、歴史、財務分析、中期経営計画を統合すると、求められている人材は、「小さな澤田氏」です。
何よりもまず、公明正大で堅実で、バランスをもって着実に物事を進められることが求められます。これは企業ストーリーからも明らかです。そのうえで、ビジョンに則り、新しい事業を作り上げていく、情熱、創造性、不屈、挑戦心が求められます。
キーワード
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まとめ
企業理解イメージ図
これまでの概要、歴史、財務分析(ビジネスモデル)、中期経営計画、企業ストーリーを構造化し、イメージ図に落とし込むと下図のようになります。
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旅行ベンチャー、色々やっているといったイメージだと思います。世界平和、人類の創造的発展、熱意というような言葉がキーワードとなります。
なぜこのキーワードになっているかというと、
①旅行ベンチャーとして革新的な取り組みにより発展してきた歴史
②多種多様な事業構造
から、構成されたものです。
そのような歴史・現在(財務・ビジネスモデル)・未来(中期経営計画)となっているのは、企業ストーリーが堅実でバランスのある価値観を中心に、創造性と情熱を付加した地に足の着いたものとなっているからです。
業界内での志望理由
企業分解イメージ図を踏まえ、現在・未来・企業ストーリーの3階層を焦点に、業界内で同社を志望すべき理由を考えます。
1.旅行コングロマリット
(現在=財務状況から)旅行業のみならず、ホテルやテーマパークなど多様な事業構造。
2.旅行ベンチャー由来の企業風土
(企業ストーリー・未来・現在から)堅実な企業ストーリーでありながらも、ベンチャー由来の創造的で情熱的な要素も兼ね備えた企業風土。
宿題:各社のHP、IR資料、中期経営計画を熟読し、理解を深めましょう。
【出典】:2019年12月同社HP、2019年12月まで発表の同社決算短信、中期経営計画、その他同社公表資料