業界研究
航空業界
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世界トップ級の評価を得ている世界に誇る日本の航空業界。航空会社では、JAL、ANAの二大巨頭は誰しもが知っている存在です。しかし、働く先になると、どんな会社なのか、どんな職種があるのか、どんなことをするのかイメージがわかないと思います。そこで今回は航空会社を研究します。業界概要
主な企業
旅航空会社は、JAL・ANAが主な企業です。そのほか、ソラシドエア、スカイマーク、LCC各社などがあります。絶対的な安全が求められ、国家の交通インフラの基盤となることから、限られた数の事業者にとどまっています。
業界のビジネスモデル
ビジネスモデル
航空会社は、その名の通り、航空機を使用して定期便・不定期便・貨物輸送を、国内・国際で行う事業内容です。したがって、出発地から目的地まで航空機でヒト・モノを輸送することが主たるビジネスです。そのため、根幹は航空機の運航とそのオペレーションです。輸送を事業として発展させていくために、貨物事業・セールス及びマーケティングを中心に、国際事業や商品事業、その他空港や航空機内での体験を向上させる事業といったビジネス関連事業があります。
ビジネスモデルを図解したものとしてANAの採用HPに掲載されている図が非常にわかりやすいため転載します。※マウスオーバーで拡大
このビジネスモデルから導き出される航空会社の強みは、以下の通りです。
①安心・安全に航空機を運航する能力(人員・ノウハウ・設備)
②安心・安全な運航をつかさどるオペレーション(人員・ノウハウ・設備)
③安心・安全な運航を実現する整備能力(人員・ノウハウ・設備)
④世界中の空港との輸送ネットワーク
⑤空港や航空機内で顧客と近接する時間・空間の活用ノウハウ
⑥顧客データ
命に関わる事業であり非常に高度な能力や体制が必要な為、参入障壁が非常に高いことが特徴です。そのため、業界の既存企業内でのシェア争いが主眼となります。
部門
ビジネスモデルから、航空会社の業務は、オペレーション・空港・運航(パイロット・客室乗務員)・整備・ビジネス・コーポレートの大きく6部門です。各部門の特徴をもとに整理すると下図のイメージになります。この特徴に基づき、採用も四象限に分けて部門別で分類されています。地上事務系(ビジネス・コーポレート)、地上技術系(整備)、空中技術系(パイロット)、空中事務系(客室乗務員)です。※マウスオーバーで拡大
業務
それでは、各業務を見てみましょう。
<パイロット>
航空会社の根幹である運航そのものを行う業務です。パイロットとしての資格や機体毎の資格など膨大な資格の取得を求められます。そのうえで訓練を重ねます。パイロットデビューするまでに7-8年を要することも普通のようです。実際の運航においては、定時運航・安全運航が必達であり、そのために乗客の状況・天候情報・離着陸の空港の状況などを包括的に把握し、オペレーションと連携しながら的確な判断を下す立場にあります。操縦のみならず、運航・現場責任者としての判断を求められます。
<客室乗務員>
運航時のフライトの保安員です。離着陸時を中心に機長の指示に従い乗客の安全を確保する業務が主体です。保安業務以外の時間は、接客員として、ドリンクのサーブや商品販売などの接客も行います。定時運航・安全運航必達の為、特に乗客のコントロールが求められます。
<ビジネス>
基本的には旅客と貨物を輸送することによって収益を上げるモデルであるため、旅客に対するセールス・マーケティング業務、貨物に対する貨物業務があります。その他、国際業務や商品開発、空港や航空機内での体験を向上させる事業といった関連業務があります。
<オペレーション>
離着陸時や運航時といった航空機のフライトを統括するフライトオペレーション、どのようなスケジュールで各路線や機体を回していくかという全体のオペレーションを統括するオペレーションマネジメントなどが業務となります。包括的な情報を整理・統合し、最適な運航となるようコントロールする司令塔の役割です。
<整備>
航空機の整備です。デイリーの点検整備から大型整備まで航空機が最善の状態に維持管理する業務です。整備項目や内容自体は決まっていますが、たった一つの見落としが事故を招きかねない業務であるため、確実に履行することが求められます。また、膨大な部品点数があるため、航空機を構造的に理解し、ある事象が発生した場合はどこに関連があるかを見抜くことも必要です。
<管理>
知財、IT、経理、財務・人事等の管理を行う部門です。それぞれの領域のエキスパートが集っています。
本業界の簡単な歴史
航空機自体は、1903年に世界初の有人飛行を実施したライト兄弟に端を発します。世界発の航空機を使用した世界初の航空会社は1913年にアメリカで登場しました。そして、1920年代にはカンタス・オーストリア航空・ルフトハンザ航空・ユナイテッド航空など欧米諸国で次々設立されます。しかし、第二次世界大戦以前は軍事使用が中心で、民間の交通路はほとんどありませんでした。
1957年に世界初のジェット旅客機ボーリング707号の出現を機に、各社の航路が飛躍的に拡大します。1990年代には、規制緩和の流れを受け、集客向上を目的にスターアライアンスやワンワールドといった航空連合が登場します。
しかし、2001年のアメリカ同時多発テロの提供により、一時的に旅客数が世界的に減少します。そのあおりや航空会社の供給過多により、経営破綻危機に陥る航空会社がでたことで、エールフランスとKLMオランダ航空の経営統合など集約がされました。
本業界の機能
概要とビジネスモデルを踏まえ、航空会社の機能は、「航空機による輸送の提供」です。航空機と船舶以外では不可能な超長距離輸送を船舶よりも圧倒的な速さで輸送することです。輸送の過程で、空港や機内で過ごす時間があるため、その体験を最良のものにすること、それによって収益を生み出すことも含まれます。また、輸送そのものも単に輸送するのではなく、安全・定時を含めいかに快適かつ最適に輸送するか、が重要です。したがって、単なる輸送というよりは、「最適な超長距離移動体験を提供する機能」という捉え方になるかと思います。※マウスオーバーで拡大
求められる人物像
これまでの業界研究から、必要な人材が導き出されます。
全体的には、安心安全が何より重要であり、着実性や堅実性を持つ人格であること、が共通して求められます。そのうえで、事務系では、ICTテクノロジーの進化も踏まえ、既存事業を一歩でもよくするためにはどうすればよいか、という思考と意識で業務を行える、先進性・主体性・創造性が求められます。※マウスオーバーで拡大
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まとめ
航空会社の本質は、超長距離移動体験提供会社
です。その主たる方法としては航空機の運航(オペレーション・整備含む)ですが、それにとどまらず、顧客体験の向上のために様々な事業を手掛けています。それを生み出す源泉は、人材と設備です。設備をどう活用するかは人間が決めて実行するため、人材を最も重要視しています。確実性を持ちながらも進化を求める先進性を持つ人材が活躍できる場所だと思います。