トヨタ自動車
国内1位、世界2位の自動車メーカーであり、日本最大の企業でもあるトヨタ自動車について研究します。
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会社概要
会社概要
1937年創立
資本金 約6,354億円
販売車数 日本 約183万台 グローバル 約621万台 (2018年度)
従業員数 単体約7万5千名 連結約37万名
国内拠点数 31 海外拠点数 60
事業内容(事業部門)
自動車の生産、販売
歴史
明治時代に創業者の豊田佐吉氏が自動織機を開発したことに端を発します。この「豊田式汽力織機」は日本初の動力織機です。運転中に以上が発生した際に自動停止し、不良品の発生を防ぐ設計思想が特徴であり、この思想は現在のトヨタにも「自働化」として受け継がれています。
その後、関東大震災を経て自動車の需要が高まり、国産自動車開発が望まれる中で、豊田自動織機製作所の自動車部が立ち上がり、多くの試行錯誤を経て量産化に成功。戦後、クラウンなどのロングセラーモデルを開発し発展。1997年には世界初のハイブリッドカープリウスを開発しさらに発展を遂げ、世界最大級の自動車メーカーとなります。2000年前後には、ダイハツ工業、日野自動車を関連会社化しました。
自動織機製造から端を発し、トヨタ生産方式を基盤に進化を遂げてきたという、堅実性と創造性を併せ持った歴史があることが分かります。
財務分析
基礎データ
売上は好況や円高の影響もありほぼ右肩上がりで、30兆円に達している。純利益は足踏みしている印象もあるものの、2018年度で8.5%とかなりの高水準を維持している。
※単位:億円
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地域別販売台数
トヨタ自動車は、国内・海外ともに圧倒的なプレゼンスを示しているといえるでしょう。特に北米の売上は大きく、アメリカではフォードに次ぐ二位のブランドであり、トヨタ単独で14%の市場シェアを獲得しています(2016年)。また、世界最大となった中国市場でも近年売上を増加させており、2018年にはこちらも売上二位、シェア8%となっています。全世界に全方位的に進出しているといえるでしょう。
※単位:千台
※マウスオーバーで拡大※2018年度
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地域別営業利益
販売台数面では地域バランスの取れた非常にグローバル化した状況でしたが、利益面では日本市場に依存度が高い状況です。この要因は、輸出による輸送コストと関税によるものです。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大※2018年度
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開発費
1兆円を超える非常に高額な研究開発投資を毎年安定して行っています。
※単位:億円
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企業ストーリー
トヨタ自動車は、最も重要な企業理念として「トヨタ基本理念」を制定しており、そのグローバル版として、トヨタグローバルビジョンを持っています。これはミッション当たる内容です。それら の下部に、バリューにあたる「トヨタ・ウェイ2001」と「トヨタ行動指針」を掲げ、それぞれを企業経営の重要な方針としています。
<全体像>
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ミッション
トヨタ基本理念は、1992年に「企業を取り巻く環境が大きく変化している時こそ、確固とした理念を持って進むべき道を見極めていくことが重要」との認識から、後述する豊田綱領をもとに現代に合わせて作成されました。このトヨタ基本理念は、トヨタの目指す姿についてかなり詳細に書かれています。ここから読み取れる要素として、「誠実さ」「責任感」「協調性」「革新性」などを従業員に対して求めていることが読み取れます。※マウスオーバーで拡大
トヨタ基本理念の根幹となる綱領です。豊田佐吉氏の6回忌に当たる1935年に、氏の遺訓をまとめて明文化したもので、これまでトヨタ経営の「核」として大切にされてきました。※マウスオーバーで拡大
バリュー
トヨタ自動車は、会社の「使命」である「トヨタ基本理念」に対して、それを実現するために全世界のトヨタ従業員が共有すべき価値観や手法を、「トヨタウェイ2001」として明文化しています。トヨタウェイは、「知恵と改善」と「人間性尊重」の二つを柱としています。「知恵と改善」は、常に現状に満足せず知恵を絞って改善を続ける姿勢のことで、これは後述するトヨタ生産方式という、トヨタのコアとなる企業姿勢に直結しています。※マウスオーバーで拡大
トヨタ行動指針は、「トヨタ基本理念」を実際に働く上でどのように実現するかについて取りまとめた価値観・手法で、全世界のトヨタ従業員に共有されています。
内容は、「第一章 私たちとトヨタ」「第二章 会社における私たちの活動」「第三章 私たちと社会」という構成で、それぞれかなり具体的な部分に踏み込んで記述されています。各分野での法令遵守や社会貢献など、ここからも「誠実さ」「責任感」を非常に重要視していることが読み取れます。
詳しくはトヨタ行動指針を実際に確認してみてください。
このトヨタの企業ストーリーをもとにしたトヨタの企業姿勢をよく表すものとして、世界的に知られている「トヨタ生産方式」があります。
<トヨタ生産方式>
トヨタ生産方式とは、注文を受けた製品を「最も早く最も効率的に作る」ために考案されたトヨタ独自の生産方式のことで、世界の製造業を一変させ、トヨタを世界的企業に押し上げた要因となりました。トヨタ自動車を志望する上では欠かせない項目です。トヨタ生産方式はそれについてのみ解説した書籍も多く存在するなど、多くの要素がありますが、ここでは最も重要な部分のみ簡単に解説します。
・自働化
「自動」ではなく、「自働」。これは豊田佐吉が開発した自動織機が、異常を検知すると自動的に停止し、不良品を作らないようにしたことに端を発している。トヨタではさらに、あらゆる製造ラインの機械に対して、逐次「カイゼン」をすることが求められる。
・ジャストインタイム
製造において「ムダ・ムラ・ムリ」を徹底的に排除するための生産方式。製造ラインをむやみに動かすのではなく、オーダーされた量に最適化した製造のみを行うことで、無駄な作業、在庫のムラ、注文への無理をなくすことがその核心。
企業ストーリーで使用される言葉を分類整理すると、下図のように表現することができると思います。※マウスオーバーで拡大
中期経営計画
トヨタ自動車は、中期経営計画を公には公開していません。ただ、毎年発行されるアニュアルレポートで、トヨタ自動車が目指す方向性を細かく提示しています。2018年のアニュアルレポートから、就活生が注目すべきポイントは三点あります。
① 「100年に一度の大変革」
業界概要で解説したとおり、自動車業界はC.A.S.E.の四つの技術革新により100年に一度の大変革期にあると言えます。
トヨタ自動車は、業界のトップランナーとして、このトレンドを非常に重要視しており、モビリティというタブをHP内で作成しています。そこでは、「モビリティカンパニー」へ転換するとしています。モビリティにまつわる包括的な製品・サービスを提供する企業へ進化していくということです。
そのために、トヨタは下図のイメージように、世界的に包括的な連携を結んでいます。それぞれが世界的企業です。これまでの部品メーカーとの強固な連携同様に、自動車メーカー・部品メーカー・ネットワーク(ITシステム企業)・サービス(ITサービス企業)と強固な連携を結び対応していく方針です。※マウスオーバーで拡大
また、トヨタはこれまで、プリウスなどのハイブリッド車で、世界中で圧倒的なプレゼンスを獲得してきましたが、今後はPHV(プラグインハイブリッド)・FCV(水素燃料電池車)・EV等の次世代駆動システムにさらに注力するとしています。
② 「持続的成長」
「トヨタ基本理念」にもある通り、トヨタは国際社会・地球の持続可能性の実現に強い意欲を持っています。2018年のアニュアルレポートでは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に基づき、トヨタが企業としてどのような役割を果たせるかを細かく記述してます。
③ 「現場志向」
これは重要論点ではないですが、レポートを見ると、社長・役員らの写真の殆どはスーツではなく作業着のものが収められています。また、アニュアルレポートの中でも実際の工場での「クルマづくり」、TPSに言及しており、企業のコアとしての現場・モノづくりというところに徹底的に拘っていることが伺えます。
また、トヨタは現CEOの豊田章男氏も現役レーサー「モリゾウ」として活躍するなど、その原点としてのモータースポーツにも積極的です。採用のシーンでも、自動車産業を単なる「機械を売るビジネス」と捉えるよりも、ビジネス的な背景・知識は頭に入れつつも、「クルマを作る・売ることへの情熱」も見せられるとよいでしょう。
求める人物像の推察
求める人物像
以上の要素を踏まえると、トヨタ自動車が求める人材は、「誠実さ」「責任感」「協調性」「革新性」「車への愛」を併せ持つ人材であると言えるでしょう。日本最大の企業で、ステークホルダーへの誠実な姿勢を大切にできる人で、かつ変革期を担え、さらに「クルマ」という移動手段への深い理解と愛情があるとなお良い、という具合でしょう
モビリティへの対応が、包括的な対象に対して、包括的な提携により、全方位的に協調して進めようという姿勢からも、上記の素養が重要であることがうかがえます。
キーワード
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まとめ
企業理解イメージ図
これまでの概要、歴史、財務分析(ビジネスモデル)、中期経営計画、企業ストーリーを構造化し、イメージ図に落とし込むと下図のようになります。
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業界内での志望理由
企業分解イメージ図を踏まえ、現在・未来・企業ストーリーの3階層を焦点に、業界内で同社を志望すべき理由を考えます。
1.世界No.1の自動車メーカー
(現在=財務状況から)世界No.1といわれるグローバルカンパニー。
2.モビリティ―カンパニー(世界的提携)の方向性
(未来=中期経営計画から)移動に関するサービスを提供するモビリティカンパニーという方向性と、全方位を包括的に全世界的提携で協調して成し遂げようとするバランスの取れた全体的な方法。
3.バランスのとれた王道的企業風土
(企業ストーリー・未来・現在から)堅実性、創造性のバランスの取れた、まさに日本を代表する世界的企業に相応しい全体感と品格のある企業風土。
宿題:各社のHP、IR資料、中期経営計画を熟読し、理解を深めましょう。
【出典】:2019年12月同社HP、2019年12月まで発表の同社決算短信、中期経営計画、その他同社公表資料