業界研究
自動車メーカー
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日本を代表する産業である自動車産業。そのすそ野は広く、自動車メーカーでは、トヨタ・ホンダ・日産・マツダなど世界に名だたる企業があります。ただ、昨今は電気自動車や自動運転のニュースが耳に入ってきており、何となく先行きに不安を感じている人がいると思います。そこで今回は自動車メーカーを研究します。業界概要
主な企業
自動車メーカーは、トヨタ自動車、本田技研工業(ホンダ)、日産自動車、マツダが主な企業です。そのほか、三菱自動車、スバル、スズキ、ダイハツがあります。
エンジンという高度な技術が必要であること、安全性への担保、製造コストが高く世界的な展開ができねば収益が得られないことなどから、限られた数のメーカーにとどまっています。
業界の現状と将来予測
ハード面では、長らく自動車はガソリン車でしたが、近年、電気とガソリンによるハイブリット車が主流となっており、日産やテスラなど一部メーカーでは完全な電気自動車も製造されており、電気自動車化へと変化が進んでいます。ソフト面では、従来のギアチェンジを人が行うマニュアル車からAIが行うオートマティック車へと変化し、現在はそれが主流となっています。一方で、ギアチェンジにとどまらず、運転そのものをAIが行う自動運転の開発が世界中で進んでおり、アメリカでは一部商用化されています。
このハードとソフトの状況から、電気自動車で自動運転がなされる、という自動車の未来が世界的に予想されています。電気自動車化×自動運転化が進展すると、技術的に自動車はコモディティ化し、自動運転を含めたソフトウェア(OS)で優劣がつくようになると考えられます。(詳細は、末尾当社の見解を参照)
業界のビジネスモデル
ビジネスモデル
自動車メーカーは、その名の通り、自動車を製造し販売するメーカーです。販売は代理店(ディーラー)を起用することが一般的です。ビジネスモデルを簡単に図解すると下図の通りです。
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企画を行い、研究開発を実施し、実験・検証を繰り返し商品化します。商品化が完了すれば、部品メーカーから部品を仕入れ、自社で製造するエンジン等の基幹部品と合わせて組み立てを行います。製造完了した自動車は、国内外の販売代理店へ卸され、販売代理店を通じて、消費者に販売される、という流れです。
このビジネスモデルから導き出される自動車メーカーの強みは、以下の通りです。
①エンジンという高度な技術が要求される基幹部品の製造(ハードの技術力)
②ハードの技術力を生かした技術開発(ハード)
②数万点に及ぶ自動車の部品に対して、適切な部品メーカーの情報網・取引網
③世界中の販売代理店の情報網・取引網
④売上高1兆円を超える規模
⑤世界中生産拠点
なお、製造した車をレンタルに回すレンタカー事業、購入に際しての自動車ローンのなどを行う金融事業も付帯して行っていますが、ここでは割愛します。
部門
ビジネスモデルから、自動車メーカー会社の業務は、研究開発・購買・製造・営業・管理の大きく5部門です。この特徴に基づき、採用も、おおむね部門別で分類されています。直近では、IT人材の採用にも積極的です。※マウスオーバーで拡大
業務
それでは、各業務を見てみましょう。
<技術開発>
自動車メーカーの根幹部分であり、特に電気自動車化と自動運転化という変化の激しい現在においては、将来の競争力を左右する部門であり、最も優秀な人員が総力を集めて技術開発を行っています。従来のハードウェアよりも、現在はソフトウェアの技術開発の重要性も増しています。
<製造:基幹部品>
現在製造している自動車の基幹部分の製造を行います。現在の自動車、現在のキャッシュフローを生み出す源泉です。技術開発につぐ優秀な社員が集まる部門です。エンジンや駆動系といった主にハードウェア(機械技術)のプロフェッショナルが集まります。
<営業(営業戦略・マーケティング)>
世界中の市場において、市場を分析し、営業戦略を構築し、実行する部門です。同時に、販売代理店の統括・育成・拡大も行います。営業部門内には、国内市場を中心に、販売代理店を統括する販売子会社がある場合もあります。営業部門の若手などは、販売子会社で販売現場の経験を積こともあります。
<購買>
世界中の部品メーカーからの購買を担当します。通常の購買に加え、代替先のリサーチ、部品メーカーの技術や競争力向上のための支援・指導も行います。
<管理>
知財、IT、経理、財務・人事等の管理を行う部門です。それぞれの領域のエキスパートが集っています。
<製造:組み立て>
工場での組み立てです。工場がある地域の従業員・期間工などはここに含まれます。
業界の簡単な歴史
自動車は、18世紀に蒸気機関を用いた蒸気自動車として登場し、19世紀にはイギリスやフランスで都市間を移動するためのバスに用いられるようになっていきました。19世紀後半、1870年代から1880年代にかけてはオーストリアやドイツでガソリンの内燃機関を用いた自動車の制作や特許取得が行われました。1896年に米国のヘンリー・フォードもガソリン自動車を開発し、1908年には改良しフォード・モデルTを発売し、大人気となり、米国で急速に自動車が普及してゆくことになりました。さらに1910年代~1920年代には安価な大衆車が登場し一層自動車が普及しました。
日本には1898年ごろから自動車が輸入されはじめ、道路法が成立した1919年には自動車台数は5000台に達していました。大正時代の関東大震災を挟んで急増し1932年には10万台を越えました。第二次世界大戦終了後、産業振興により、自動車が飛躍的に普及し、1955年には通産省が「国民車構想」を発表しました。60年代前半には各社から軽自動車が発売されました。1960年は230万台、1965年には724万台となり、わずか10年間で約8倍に急増しました。1966年は「マイカー元年」と呼ばれ、トヨタ・カローラ・、日産・サニーなどの大衆車が発売され自動車が普及が進展しました。その後、自動車は普及を続け、各社は世界展開を行い拡大を続けています。なお、1980年代以降、多国籍企業グループへの集約が進んでいる状況です。
業界の機能
概要とビジネスモデルを踏まえ、自動車メーカーの機能は、「様々なニーズに応じた自動車製品の提供」です。いかにニーズに合った良い車を造るか、それを世界中に届けるかです。
そして将来は、「移動手段を提供すること」、が機能になると思います。自動車メーカーではなくなり、「モビリティサービス提供会社」になると思います。便利に、安価に、安全に、誰でもいつでも自動運転車で移動できるサービスを提供する、ということです。
従来の高級自動車メーカーは、特別な高級車で移動できる移動体験を提供することになるでしょう。エンジンによる技術的特異性よりも、内装や外装のデザインに由来するビジュアルクリエーションによる「移動体験」が重要になると思います。※マウスオーバーで拡大
求められる人物像
本業界のビジネスモデルと機能、将来の変化への予想から、必要な人材が導き出されます。
全体的には、自動車メーカーは変革期にあり、既存事業の運営であっても、一歩でもよくするためにはどうすればよいか、という思考と意識で業務を行える、先進性・主体性・創造性が求められます。従来の発展モデルや成功の方程式は崩れ、自ら新しい成功モデルを創り上げていく創造性が求められます。※マウスオーバーで拡大
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まとめ
自動車メーカーの本質は、現時点では自動車の製造会社ですが、将来的にはモビリティサービス会社
です。
その主たる方法として、従来は自動車製造でしたが、製造ではなく自動車利用サービスの提供に変化すると思われます。そのサービスの主たる一アイテムとしての自動車の製造になると思います。それを生み出す源泉は、人材による技術開発、規模とネットワークによるオープンイノベーションです。それゆえ、自動車各社は様々な企業と提携を行うわけです。
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コラム:自動車メーカーの未来
自劇的な変化が予想される業界ゆえ、特別に将来予測に関する内容を参考用に記載します。ただし、当社としての見解が多分に入るため、おまけの扱いとしています。こういう見解もあるんだという参考程度の取り扱いとしてください。
自動車メーカーの未来
自動車は、確実に電気自動車×自動運転へと進化します。電気自動車化と自動運転の影響は以下のようになると推察しています。少し捕捉します。※マウスオーバーで拡大
電気自動車化すると、技術的に大きな意味合いがあります。
<電気自動車化の補足>
①:自動車用の小規模発電機は特段技術的に高度ではなく、ハード面からいえばだれでも算入できる余地が生まれる(テスラなどのベンチャーですら算入が可能に)。
②:エンジン含めた機械駆動部分が非常に少なく済むようになる。そうすると、部品メーカー含めた裾野を支える産業に大きな影響を与える。
③:力の伝達の経路がシンプルになり発車と停車がガソリン車よりも素早く行えること、安全装置の機能向上、により衝突防止対策が最小限ですみ、重厚な車体は不要に。
④:高級車の高級車たるゆえんの根幹は圧倒的なエンジンの性能でした。エンジンがなくなり発電機となれば、エンジン性能の技術的優位性が薄れ、高級車の根幹がなくなります。全体的には、電気自動車化により自動車はハードウェアとしてはコモディティ化します。
また、自動運転化が進むと、以下の点で大きな変化となります。
<自動運転化の補足>
①:自動で車を動かすソフト技術に価値が置かれるようになる。自動運転の効率性や安全性が中心に。この段階になると、完全にハードとしての自動車はコモディティ化します。
②:自動運転化すれば、カーシェアリングが進化し、現在の車の個体をシェアする発想を越えて、特定メーカーの全車種を使用できる「使用権利」をシェアするモデルへ進化することが見込まれます。そうなると、好きな時間に好き場所に迎えに来させることが可能になり、購入する対象ではなくなります。
③:上記①②を踏まえ、そのメーカーの自動車を使用するかの判断は、自動運転ソフトウェアのレベルとマッチングソフトウェアの利便性(安全に便利に使いたい場所で使えるか)、そのメーカーの自動運転車の流通性(すぐ車が使えるか)に依存すると思われます。コモディティ化のため、技術的観点ではなく、利便性の観点で購買の判断に変化します。
これらの結果として、移動手段という機能そのものが重要であり、それを実現するハード(車体・車種・性能)に価値や差はそうなくなるということです。自動車が、物体からモビリティという抽象的な概念・サービス・あるいはシステムにその定義や認識が変わることになると思われます。
携帯電話で例えると、iPhoneとアンドロイドスマホの違いは、ハード側にはなく、OSが異なり、機能も異なり、何よりアクセス可能なアプリが大きく異なる、という捉え方に近いと思います。したがって、自動車の製造→販売モデルではなく、モビリティシステムの利用→利用料モデル(サブスクリプションモデル)へとシフトすると考えます。※マウスオーバーで拡大
では、自動車メーカーはどう対応していくのでしょうか。
ハードのコモディティ化により、下図のように現在の自動車会社の強みが薄れ、販売代理店とのネットワーク、生産拠点、生産拠点が価値として残ります。一方で、新たな価値である自動運転技術は、特段優位性があるわけではないため、各社必死に技術研究しています。そのあとに控える各種ソフト(車内アプリ)や、自動運転性能向上に資する各種データとその解析は、グーグルなどの他社に優位性があります。※マウスオーバーで拡大
そのため、勢力図としては以下のようになると思います。自動車メーカーの場合は、電気自動車化×自動運転化、モビリティ会社への変化はみな同じだと思うので、各社が定義するモビリティとは何か、どこまで進むのか、自社ではどこまで行い、どのような提携を組んでいくのか、というところが、各社の方針の差異を見極める着眼点になるかと思います。※マウスオーバーで拡大
現時点での提携による勢力図は大きく3つに分かれます(テスラ除く)。携帯電話の例でいれば、自動運転技術の実装までで済ませる(自動運転電気自動車メーカー)のか、それを含めて自動車全体をOSと捉えてOS開発までに踏み込むのか(モビリティシステム会社)、さらにアプリにまで踏み込むのか(モビリティサービス会社)、といったところです。※マウスオーバーで拡大
当社としては、自動車メーカーを目指す学生の方には、上記を頭に入れ、自動車メーカーに入るとか自動車メーカーの社員になるという意識ではなく、「モビリティ(サービス)企業」に入る、「モビリティ(サービス)のプロフェッショナルになる」、という考え方をもって、入社してほしいと願っています。
そうすれば、日々の一つ一つの細かいタスクからでも、モビリティ(サービス)会社への進化を常に意識して業務を行うことができ、創造性・主体性の向上につながり、あなた自身の市場価値を向上させることにつながると思います。