Panasonic
日本のトップ電機メーカーの一つであるPanasonicについて研究を行います。
-
会社概要
会社概要
1935年設立(1918年創業)
資本金約2,587億円
関連会社 582
従業員数 連結約271,869名
事業内容(事業部門)
カンパニー制を採用。2019年度よりカンパニーを変更した。
アプライアンス社(家電)、コネクティッドソリューション社、インダストリアルソリューション社(電子部品等産業デバイス)、ライフソリューションズ社(電設や住宅資材等)、オートモーティブ社(車載電池などの電動化システム)、中国北東アジア社(家電と住宅設備を組み合わせた「くらし空間の提案」、コールドチェーンを中心とした「生鮮食品サプライチェーン)、US社、の7カンパニー。
歴史
1917年6月、松下幸之助が大阪府東成郡鶴橋町大字猪飼野の借家で電球用ソケットの製造販売を始めたことに端を発する。1918年、大阪市北区西野田大開町に移転し、松下電気器具製作所を創立。1938年、松下電器産業株式会社を設立。
1955年、Panasonicブランドを、海外向けとして初使用。2008年、パナソニック株式会社に商号変更。企業グループ名もパナソニックグループとしました。2011年、パナソニック電工、三洋電機を完全子会社化。以後、発展を続け現在に至ります。
基本的には、大阪の家電製造販売から身を起こした企業であり、世界屈指の総合電機メーカーとなった現在においても、その中心には家電がある、と言えるでしょう。
財務分析
Panasonicが様々な会社を連結させており、Panasonicの決算=Panasonicグループの決算と捉えることができます。
基礎データ
7-8兆円の売り上げと2千億円規模の(親会社に帰属する)当期純利益と、水準は日本を代表する企業です。特に利益は増加傾向にあります。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大
部門別収益
アプライアンス(家電)が安定的かつ平均的に最大の収益を上げており、これは主要国内電機メーカーのなかでもPanasonicだけです。こうしたポートフォリオからも、家電から身を起こした歴史が垣間見えます。他セグメントも安定的に利益を上げており、非常に安定した事業ポートフォリオといえます。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大
地域別売り上げ
海外割合が日本を超えており、グローバルマニファクチャラーといえる水準。特にアジアに強く、アジアの中では中国が群を抜いています。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大※2018年度
※マウスオーバーで拡大
開発費
開発費は4,000億円と安定的に推移しており、売上高の比率も6%程度と金額割合ともに電機業界のトップ。IoTやAIやビッグデータに関する技術開発、事業開発に取り組んでいる状況。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大
企業ストーリー
Panasonicは、創業者松下幸之助が定めた、綱領・信条・精神を経営理念とし、それを踏まえたブランドスローガンを定めています。綱領をミッション、ブランドスローガンをビジョン、信条と精神をバリューと読み替えます。
ミッション
Panasonicの根幹である、社会生活の改善と向上、世界文化の進展の寄与、という使命が記載されています。社会の向上、そして世界「文化」の進展というところを目指しており、創造性が重要されることがわかります。そのためか、モノづくりといった表現はなく、自由で幅の広い綱領です。※マウスオーバーで拡大
ビジョン
※マウスオーバーで拡大
基盤となる松下幸之助による綱領・信条・精神を踏まえて、現代的に解釈しなおしたものが定められています。
「良いくらしを創造」することで、世界と社会と地球の未来やその発展に貢献する、ということです。ここで、「良いくらしの創造」という方向性が初めて示されています。電機メーカー各社が、家電事業から撤退または縮小を行う中で、Panasonicのみ維持していることは、このビジョン由来します。そして、むしろ家電事業をこそ中心に据えており、今後も中心的に行っていくということでしょう。「良いくらし」がキーワードです。
バリュー
信条からは、人と地球の未来への向上発展という先進性や創造性が目的にあること、そしてそのためには和親協力、至誠、一致団結といったチームワークと誠実さが重要と考えていることが分かります。※マウスオーバーで拡大
信条を具体的に表した精神においては、産業報国・公明正大という高潔さと視座の高さ、和親一致・礼節謙譲・順応同化・感謝報恩といった人間性、そして力闘向上という情熱、の表現がなされています。
信条と精神から、人間性やチームワークといったバランスを重視して事を成すことを重要視していることがわかります。ミッションとの掛け合わせ、バランスを最も大切に、創造を行っていくこと、が読み取れます。
企業ストーリーで使用される言葉を分類整理すると、下図のように表現することができると思います。※マウスオーバーで拡大
バランスに関する表現が、一番多いものの、ミッションとビジョンにおいて、創造することが目的に置かれているため、バランスを最優先としながらも、創造性がほぼ同じ重要度にあると解釈しました。
中期経営計画
Panasonicは、2019年に2021年に向けて3年間の中期経営計画を発表しています。
方針
※マウスオーバーで拡大
事業ポートフォリオマネジメント、経営体質の強化、という強化が中心です。そのうえで、「くらしアップデート会社」を目指すとしています。
戦略
※マウスオーバーで拡大
戦略は、ポートフォリオ見直しの内容を描いています。中期経営計画書では、紙面のほとんどがポートフォリオマネジメントに割かれていました。まずは、企業としてのバランスを重視し足元をきっちり固める姿勢が伺えます。
事業を基幹事業・再挑戦事業・共創事業の3つに分け、それぞれ利益額拡大・収益性改善・競争力強化として位置付けています。
施策
具体的な施策としては、基幹・再挑戦・共創の事業種類に応じて、図の通り対象領域を設定しています。
総じて、中期経営計画においては、革新的な新しい何かを行うというよりも、今あるものを強化していく堅実な中期経営計画となっています。これは財務状況が安定していること、バランスを重要視する企業ストーリーが起因すると思われます。
求める人物像の推察
求める人物像
企業ストーリー、歴史、財務分析、中期経営計画を統合すると、求められている人材は、いわば「小さな松下幸之助」です。
創業者である有名な松下幸之助のように、産業報国のような高潔な精神や志が強く求められます。その上で、人々のくらしによりそい、より良くしていくことのできる創造性も必要とされます。
さらに、デジタライゼーションの過渡期にある現在に、技術革新を人々の暮らしに役立てていける能力と、それを実行しようとする情熱も欠かせません。
そのためには、誠実であること、日々小さな創意工夫を行う力があるか、が重要になってくるはずです。
キーワード
※マウスオーバーで拡大
-
まとめ
企業理解イメージ図
これまでの概要、歴史、財務分析(ビジネスモデル)、中期経営計画、企業ストーリーを構造化し、イメージ図に落とし込むと下図のようになります。
※マウスオーバーで拡大
王道、バランス、創造的といったイメージだと思います。
誠実、チームワーク、創造、社会生活の向上、というような言葉がキーワードとなります。
なぜこのキーワードになっているかというと、
①松下幸之助の定めた経営理念
②唯一の家電が主体の電機メーカー
③くらしアップデート企業という将来計画
から、構成されたものです。
そのような歴史・現在(財務・ビジネスモデル)・未来(中期経営計画)となっているのは、企業ストーリーが高潔さを基盤にして未来への創造を中心においたものとなっているからです。
業界内での志望理由
企業分解イメージ図を踏まえ、現在・未来・企業ストーリーの3階層を焦点に、業界内で同社を志望すべき理由を考えます。
1.唯一の家電が中心にある電機メーカー
(現在=財務状況から)家電が中心にある唯一の電機メーカー。
2.くらしをアップデートする企業という方向性
(未来=中期経営計画から)他電機メーカーは産業やデジタライゼーションへの言及が多い中で、くらしアップデートという、あくまでくらし、家電を中心に置いた将来計画。
3.堅実・高潔であり、創造的な企業姿勢
(企業ストーリー・未来・現在から)創造性と安定性のバランスが完璧にとれているところに特徴がある。特に高潔さは他の追随を許さない。
宿題:各社のHP、IR資料、中期経営計画を熟読し、理解を深めましょう。
【出典】:2019年12月同社HP、2019年12月まで発表の同社決算短信、中期経営計画、その他同社公表資料