富士通
情報電機メーカーのトップである富士通について研究を行います。
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会社概要
会社概要
1935年設立
資本金約3,246億円
従業員数 約13万人
事業内容(事業部門)
テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューションの3事業。決算報告では、テクノロジーソリューションをSIなどのサービスとスーパーコンピュータなどのシステムプラットフォームに分けており、この分野に注力していることが伺えます。
歴史
1935年に、富士電機製造株式会社(現富士電機株式会社)の電話部所管業務を分離し富士通信機製造株式会社(現富士通株式会社)を設立しました。創業時から通信機器に強みを持ち、1940年には逓信省に日本初の国産自動交換機を納入しました。戦後も逓信省から電話機を正式採用され、日本の通信設備復興に大きく貢献しました。また、1954年に日本初の実用リレー式自動計算機の開発に端を発し、大規模汎用機「FARCOM230-60」(1968年)や日本初のスーパーコンピュータの開発(1977年)といった、産業コンピューター分野においても大きな功績を残してきました。1992年にはFMVブランドで個人向けコンピューター分野に進出。通信機器の分野において、時代やテクノロジーの発展に合わせて進化を続け、2014年にはIoTプラットフォーム、2015年にはAIやデジタルプラットフォームをリリースする等、最先端通信テクノロジーに強みを持ち発展を続けている。
財務分析
基礎データ
売上、利益ともに安定しています。システム領域での強さがうかがえます。なお、2017年度のみ利益が高く出ているのは、ニフティのコンシューマー事業譲渡の売却益による特殊事情で、特殊事業を除くとおおむね1,000億年から1,100億円の通常範囲におさまります。
※単位:億円
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部門別収益
テクノリーソリューション事業が最大の収益源となっています。決算資料では、テクノロジーソリューションを、サービス(ex. SI)とシステムプラットフォーム(ex. サーバーやストレージ製品)に分けて提示しており、企業としてこの事業に注力していることが分かります。サービス事業は増益している一方で、ユビキタスソリューション(ex. パソコン)やデバイスソリューション(ex. システムメモリ)が減益している現状を鑑みると、企業全体として、ハードウェアよりもソフトウェアでの価値提供に軸足を転換していることが読み取れます。
※単位:億円
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地域別売上
国内が中心ですが、海外の売り上げも1兆円を超えており、グローバル企業といえます。注目すべきは、地域をEMEIA(欧州・中近東・インド・アフリカ)で括り、7500-8000億円もの売り上げをあげている点です。EMEIAの中でも特に、北欧・西欧はグローバルサービス展開の中核として機能しています。最先端ICT企業として、西欧の企業に高い評価を得ている証左といえます。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大※2018年度
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開発費
売上高研究費比率は業界内の平均以上です。ただし、1300億円を超えており依然として高額ではあるものの、減少傾向にあります。これは企業のビジネスモデル変革に伴い、積極的に行っている投資(ベンチャー投資やM &A等)に資金が転換されている影響が考えられます。
※単位:億円
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企業ストーリー
富士通は、2008年にグループの理念、指針であるFUJITSU Wayを改定しました。
FUJITSU Wayは企業理念、企業指針、行動指針、行動規範の4つの要素で成り立っています。企業理念をビジョン、企業指針をバリューと読みかえます。
ビジョン
富士通の根幹であるネットワーク作りへの宣言が読み取れます。創業時から、通信分野において日本を代表する功績を残してきた歴史が、このビジョンに起因していると思います。さらに、ネットワークの可能性がますます広がる時代において、常に変革をし、世界中の人々に広げていこうという情熱が感じられます。創造的かつ情熱的なビジョンと言えます。※マウスオーバーで拡大
バリュー
企業指針として、常に広い視点で考え、他者奉仕する為に向上していく方向性が読み取れます。したがって、「バランス」、「向上」がキーワードと言えそうです。※マウスオーバーで拡大
また、社員、お客様、お取引先といった全ての関係者を大切にし、信頼関係を築く価値観や、技術領域で新たな価値を創造し続ける意気込みが読み取れます。ここから、「信頼」や「創造」といったキーワードが読み取れます。
堅実でバランスのあるバリューと言えます。
全体としては、ビジョンでは創造性と情熱、バリューで堅実性やバランスに言及あることから、それぞれバランスが取れた企業ストーリーと言えると思います。
企業ストーリーで使用される言葉を分類整理すると、下図のように表現することができると思います。※マウスオーバーで拡大
中期経営計画
富士通は、2015年度から、「DX企業へ」をテーマに、コア事業へのフォーカスを進める「形を変える」取り組みと成長を加速する「質を変える」取り組みを行ってきました。2019年度からは、「質を変える」取り組みにさらにより集中する方針を発表しています。
【DX(デジタルトランスフォーメーション)…デジタル技術とデータを駆使し革新的なサービスやビジネスモデルの変革をもたらすもの】
方針
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5G・AI・IOTなどの最先端テクノロジーとそのインテグレーションを基盤に、コンサルティングやサービスによって、新しい価値を創造していく、という方針です。
戦略
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DX会社へというテーマをもとに、DX新会社を設立したうえで、DXコンサルを2,000名に増員するという戦略です。
施策
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DX会社の展開として、下図の通り、重点技術領域を特定し、集中的に強化を行っていくこととしています。
AI、5G、サイバーセキュリティーといった最先端技術に注力する方針です。さらに各技術を統合し、クラウド上でデジタルとリアルを連関させ、その過程で得られたデータを自社技術の深化に活かしていくものです。
また、サービス・コンサルティングの協力、最先端システムコンピューティングの強化、5G事業の強化、EMEIA(西欧中心)の強化を上げています。
総じて、最先端テクノロジーを基盤に、コンサルティング・サービスを行っていくDX企業、という方向性です。
求める人物像の推察
求める人物像
企業ストーリー、歴史、財務分析、中期経営計画を統合すると、求められている人材像は、社会の真の課題を読み取り、最先端のテクノロジーを基盤に、新たな価値を創造し、ソリューションを提供できるICTソリューションプロバイダーです。
外部パートナーとも共存共栄しながらつなぎ合わせていく視野の広さ、バランス感覚のある人間性、を持ち、情熱的に実行できる人材です。
その意味では、創造性とバランス感覚と情熱をバランスよく持ちながら、課題解決の為に、何かをつなぎ合わせ、技術を活用し、ソリューションを生み出すことができるということを示す必要があると思います。
キーワード
中期経営計画が、創造的でありながら、堅実さとバランスの取れた内容であるため、最終的なキーワードの優先順位は上図の通りの整理となるかと思います。※マウスオーバーで拡大
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まとめ
企業理解イメージ図
これまでの概要、歴史、財務分析(ビジネスモデル)、中期経営計画、企業ストーリーを構造化し、イメージ図に落とし込むと下図のようになります。
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富士通に対しては、誠実、ITに強いといったイメージが浮かぶと思います。このイメージを分解すると、バランスと創造性、情熱を全てが求められていることが読み取れます。富士通が伝統的に育んできたIT技術を大切にしながら、今の世界が求める新しい価値を提供できるように変革していくことが必要です。
なぜこのキーワードになるかというと、
① 1935年の創業時から日本の通信分野を牽引し続けてきた歴史
② 収益の中心がハードウェア販売から、ITサービス提供となっている財務状況
③ グローバルDX企業への変革を目指す将来計画
から構成されたものです。
そのような歴史・現在(財務・ビジネスモデル)・未来(中期経営計画)となっているのは、企業ストーリーが、変革に挑戦し続け、快適で安心できるネットワーク社会づくりへの貢献を目指しているからです。
業界内での志望理由
企業分解イメージ図を踏まえ、現在・未来・企業ストーリーの3階層を焦点に、業界内で同社を志望すべき理由を考えます。
1.最先端のITプロフェッショナル
(現在=財務状況から)IT技術を持ちながら、それを使ってサービスを提供する「人」の営みが収益の中心を担っている。
2.グローバルDX企業という方向性
(未来=中期経営計画から)最先端のIT技術を武器に、世界に向けたで新しい価値提供に挑戦できる。
3.最先端通信技術へのこだわりのある企業姿勢
(企業ストーリー・未来、現在から)80年以上通信業界において最先端技術とその活用により信頼を獲得し続けてきたことに起因する最先端技術への創造と情熱、そして最先端技術会社としてのバランス感覚のある企業風土。
宿題:各社のHP、IR資料、中期経営計画を熟読し、理解を深めましょう。
【出典】:2019年12月同社HP、2019年12月まで発表の同社決算短信、中期経営計画、その他同社公表資料