NEC
日本の電機メーカー業界の中で、特にシステムに舵を切っているNECについて研究を行います。
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会社概要
会社概要
1946年設立(1899年創業)
資本金約3,972億円
従業員数 単体20,252名 連結110,595名
事業内容
パブリック事業(官公庁向けシステムインテグレーション)
エンタープライズ事業(企業向けITソリューション)
ネットワークサービス事業(通信事業者向けシステムソリューション)
システムプラットフォーム事業(プラットフォーム構築)
歴史
1899年に岩垂邦彦が日本電気株式会社設立。岩垂は、工部省に勤めた後、渡米し、エジソン・マシン・ワークスに入社。エジソンと共に働いた数少ない日本人として知られています。帰国後、大阪電燈初代技師長を経て、1899年、42歳でウェスタン・エレクトリック社との合弁会社「日本電気株式会社」を創業した。日本最初の合弁企業の事例とされます。
戦前は、電話交換機などの通信機器の製造を主な事業としていた。戦後は、通信関係や真空管や半導体など電子部品の製造のほか、家電・無線通信機器分野に進出。さらに、1960年代より、マイクロ波通信装置を中心とする通信機器の海外輸出に積極的に取り組み始め、1977年には、「コンピュータと通信の融合」をうたった「C&C」のスローガンが提唱され、新たな企業理念となり、情報・通信系を中心とした総合電機メーカーへと変貌を遂げる。
2000年代に入ると、消費者向け事業からは撤退し、総合電機メーカーとしての暖簾を下ろし、C&Cコンセプトに立ち戻り、コンピュータシステム及び通信を中心とした通信機器の電機メーカーへ転換。2010年代には、ハードウェアからソフトウェアへ転換を進め、現在では社会インフラ向けのシステムを中心とするシステム企業、ITソリューション企業へさらに転換。
財務分析
NECは関連会社が多く、NECの決算=NECグループの決算と捉えるべきです。したがって、すべてNECグループとしての情報です。
基礎データ
売り上げは順調に伸びています。ただし、売上高利益率が業界内では非常に低水準です。
※単位:億円
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部門別収益
グローバルを除き非常に安定しています。法人向け社会インフラのシステムインテグレーターとして、国内では全方位的に安定して利益を上げています。
※単位:億円
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地域別売り上げ
セグメント利益でグローバルが赤字でしたが、売り上げにおいてもやはり圧倒的に日本に依存しています。現時点では、海外に広げていくための活動を行っており、利益は度外視の状況ということが推察されます。エリア別売り上げのポートフォリオの構築が大きな課題と言えるでしょう。
※単位:億円
※マウスオーバーで拡大※2018年度
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開発費
金額は毎年同じ額です。売上開発費比率は、業界内の平均をやや上回る水準です。
※単位:億円
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企業ストーリー
NECは、NEC WAYとして、企業理念・NECグループビジョン、NECグループバリューを中心とする企業ストーリーを定めています。
企業理念をミッション、グループビジョンをビジョン、グループバリューをバリューとし、ミッション→ビジョン→バリューの順の構成として読み替えます。
ミッション
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1977年に定められた企業理念を基盤に、現在に合わせて解釈した、コーポレートステートメントが設定されています。ネットワークとコンピューティング技術インテグレーターとして社会を創造していくことを宣言しています。
それを共創・協奏により実現していくことを大切にしており、それをオーケストラになぞらえた単語用いてキャッチフレーズとして表現しています。
ビジョン
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やさしい情報社会を目指す社会とし、基盤の提供者として貢献し、新しい価値を創造することを謳っています。あくまで、基盤提供者として自身を位置付けています。
バリュー
社会価値創造のアプローチ※マウスオーバーで拡大
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企業ストーリーで使用される言葉を分類整理すると、下図のように表現することができると思います。※マウスオーバーで拡大
創造性とバランスが同じほどに重要です。NECにとっての創造性とは、基盤提供者、システムインテグレーターであるため、何か独創的なものを生み出すというよりも、顧客と共同で知恵を絞りよりよいものを生み出していく、という共同での進化を意味します。それは共創と協奏です。そのため、オーケストラになぞらえたというコピーを用いているわけです。それゆえ、単独では行えないため、共同や協調というバランスが非常に大切になります。
中期経営計画
NECは、2018年に、2018-2020年度までの3年間の中期経営計画を発表しています。
方針
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既存事業の成長が鈍化しているため、まずは成長軌道への回帰をテーマとしています。その意味では、質実剛健に足元を強化するフェーズにあるといえます。
戦略
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構造改革、成長の実現、実行力の改革という三つの戦略を上げています。
施策
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国内においては、共通業務プラットフォームを構築し、それを基盤にして、顧客とパートナーリングにより、ソリューション提供するサービス型へのビジネスモデルを変革するという方法です。
その対象として、スマートシティ、スマートサプライチェーン、コネクティッドカーの3分野が中心となっています。
海外においては、セーフ技術を中心に据え、M&Aを活用しながら拡大していく方法です。
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全体的には、次世代テクノロジーを活用し、プラットフォームを構築し、それを活用し共創によりテクノロジー関連の課題にソリューションを提供する、方向が掲げられています。
そして、グローバルはM&Aを活用しセーフ技術面で拡大していく方向です。
企業ストーリーの通り、システム面でのインテグレーター、さらにそれを超えてプラットフォーマー×ソリューションプロバイダーになろうとしています。
求める人物像の推察
求める人物像
企業ストーリー、歴史、財務分析、中期経営計画を統合すると、求められている人材は、
「物事俯瞰し、まとめ・つなぎ、内外問わず共創し、新しいソリューションを構築できる、俯瞰的、統合的視点のあるイノベーターです」です。
論理的に導出される人材像は上記ですが、NECの場合はNEC Wayの人財哲学においてNECが評価する人物像を下図の通り明示しており、上記とほぼ同じ内容でした。
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キーワード
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まとめ
企業理解イメージ図
これまでの概要、歴史、財務分析(ビジネスモデル)、中期経営計画、企業ストーリーを構造化し、イメージ図に落とし込むと下図のようになります。
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積極的、事業構造変化、システムといったイメージだと思います。
イノベーション、インテグレーター、共創などがキーワードとなります。
なぜこのキーワードになっているかというと、
①通信機器メーカーから始まった歴史
②社会インフラ向けシステムインテグレーターである事業構造
③社会イノベーション事業を目指す将来計画
から、構成されたものです。
そのような歴史・現在(財務・ビジネスモデル)・未来(中期経営計画)となっているのは、企業ストーリーが、人と地球にやさしい情報世界を目指しているからです。
業界内での志望理由
企業分解イメージ図を踏まえ、現在・未来・企業ストーリーの3階層を焦点に、業界内で同社を志望すべき理由を考えます。
1.大規模なシステムインテグレーター
(現在=財務状況から)非常に大規模なシステムインテグレーターという独特の立ち位置。
2. 社会イノベーション事業という方向性
(未来=中期経営計画から)次世代テクノロジーの開発活用に積極的であり、それらを活用してプラットフォームを創り、つなぎあわせる共創により、新しい価値を創造するソリューションを提供する社会イノベーション事業という独自の方向性。
3. 事業構造を幾度も進化させた柔軟性とバランス
(企業ストーリー・未来・現在から)創業以来幾度も事業構造を変化させてきた柔軟さとバランス感覚のある企業風土。
宿題:各社のHP、IR資料、中期経営計画を熟読し、理解を深めましょう。
【出典】:2019年12月同社HP、2019年12月まで発表の同社決算短信、中期経営計画、その他同社公表資料